時が来た
ルセランテが国王の側妃となって、2年の時が過ぎた。
ルセランテの美貌は衰えることを知らず、それどころかますます磨きがかかっていた。
国王の寵愛もまた、尽きることがないどころか、深く溺れるようになり、政にも支障が出るようになってしまっていた。
これほどまでに寵愛を受けているにも関わらず、ルセランテは妊娠することがなかった。
ルセランテが妊娠することを、誰1人望んでいなかったからだ。
そんな時、国王が病にふせるようになった。
初めは軽い風邪の症状だったのに、徐々に悪化して、今では寝台から起き上がることができなくなった。
病の原因は特定できず、医師も手をこまねいている状態だった。
国王が倒れたことで政の心配されたが、経験の浅い王子の代わりに王妃が国政を担うことになった。
王妃が政を行うことで、国の情勢が安定することになったのは、国王にとって皮肉なことだったのだが。
王妃が国政を担うにあたって、まず初めに行ったのは『傾国の魔女』と呼ばれる側妃ルセランテの幽閉だった。
政を傾けた原因が彼女にあるとし、罪人の塔に幽閉したのだった。
それに反対するものは、本人含めて誰もいなかった。
罪人の塔に移されたルセランテの環境は、今までの煌びやかさとは一変していた。
狭くて暗い部屋、鉄格子の窓、鍵のかけられた扉、質素なベッドに服。
扉の前や塔の周りには、四六時中見張りの兵士がいる。
息が詰まる環境であるはずなのに、ルセランテはホッとしていた。
むしろ、今までの2年間の生活のほうが、息が詰まる思いだったからだ。
寝ても覚めても国王がいる環境は、息苦しくて辛かった。
籠の鳥のように、主の機嫌を取るだけの愛玩人形。
それがルセランテだった。
侍女と話をすることも許されず、外を出歩く時は国王がいつも一緒。
気を緩める時間がなかった。
夢の中でしか、現実から逃れられる方法がなかったのだ。
それでも、一度も死を望んだことなどないし、諦めたこともなかった。
国王が油断する時まで、ゆっくりと時間をかけてその時を待った。
何年、何十年かかろうとも、この胸の内にある暗い炎は消えなかった。
いや、消さなかった。
どれだけ寵愛を向けられても、どれだけ贈り物をもらっても、この心だけは、決して渡さなかった。
表面上は絆されて愛しているフリをして、心の中で復讐の機会を伺っていた。
国王は自分を愛さない者がいるなんて思いもせず、一片たりとも疑わなかった。
国王だけではない。
実情を知っている人も、知らない人も、その点において彼女を疑うことはなかった。




