第22話 聖女の女神降臨スキル
期限はあまりない。
このままでは村は消滅し、なにもかもを失う。今のところは“全滅”の未来しか見えない。
落ち着きなく歩き回っても策は出てこない。
どうやってゼルファードを守る?
何千、下手すりゃ何万もの敵が押し寄せてくるんだ。現実的に考えたら勝てるワケがねえ。でも、それでも勝たねばならない。
「村の移動とかできないよな」
「さすがにそれは無理でしょう」
「だよな……」
「多分、転移も不可能かと。というか、聞いたことがありません」
オーロラも一緒になって作戦を練ってくれるか、これといった案は出てこない。大体、不可能な方法ばかり思い浮かぶ。
そう奇跡は安売りしていないわな。
困ったなぁ。
「んー…」
「クレミアさんに聞いてみるとか?」
「お。オーロラ、それ名案だな!」
なにげにクレミアは最高位の魔術師。上級魔導士を超えていると思う。この前の防衛線では素晴らしい魔法を発揮してくれたからな。
そうだ、彼女なら何か妙案を提示してくれるかもしれん。
「行きますか!」
「そうしよう。クレミアの家へ向かう」
「了解ですっ」
オーロラを連れ、クレミアの家へ。
と、行っても俺は住んでいる場所を知らんのだが。それはオーロラも同様だった。
なら、村人に聞いてみるか。
中央噴水広場にいる子供に聞いてみた。
「ちょっと、そこのキミ」
「あ、この前助けてくれた勇者様だー!」
よく見れば騎士に蹴られて負傷していた子じゃないか。無事でよかった。
「クレミアという女の子の家を知らないかい?」
「知ってるよ! お姉ちゃんは近所に住んでいるからねっ!」
「そりゃ丁度いい。案内してくれるか」
「もちろん!」
イイ子だな。
村の子供のおかげでクレミアの居場所を知れた。
案内してもらい、村の奥の方へ進んだ。
なかなかの距離を歩いたな。
畑の方にある家なのか。
「ここなんだな」
「うん! じゃ、僕は帰るね~」
「ありがとう。これはお駄賃だ」
「やったー! 勇者様、ありがとー!」
笑顔で去っていく子供。うんうん、将来は俺みたいな勇者になるんだぞ。
「さすがエルドさん。おこづかいをあげるなんて優しいですねっ」
「勇者だからな!」
さっそく扉をノックして反応を待つ。
しばらくすると奥からクレミアが姿を現した。
「エルド様にオーロラ様。なぜ、わたしの家に」
「クレミア、ゼルファードのことで相談したい。シュヴァルク王国が総攻撃を仕掛けてくるかもしれない……と、言ったら信じてくれるか?」
「もちろんです。王国は幾度となく、この村を攻めてきましたので」
許せないという表情を浮かべるクレミア。はやり、昔から嫌がらせはあったのだな。しかし、俺が来てからは悪化。今回は総攻撃に至ってしまった。
「力を貸してくれ」
「はい。ですが、総攻撃ともなると……なかなか」
「防御とか転移とか俺たちも考えたが、現実は厳しそうでな」
「でしょうね。現状は神の御業レベルです」
神や女神の力があったら別なのだろうが、そのような高位存在は滅多に降臨しない。……いや、女神とは道中で何度か会った。
力を貰ったこともあったが、期間限定だった。
アイテム類も使い果たしてしまったしな。
「クレミアの知り合いに女神はいないよな」
首を横に振るクレミアは「いません」と残念そうに言った。……ですよね。
女神が住むは『聖天空界』だ。
聖剣アルビオンが作れた場所も聖天空界らしい。
「……なるほど、女神、ですね」
ぽつりとつぶやくオーロラは、なにか思いついたようだ。
「どうした、オーロラ」
「思い出したんです」
「なにを?」
「女神降臨ですよ」
「女神降臨?」
「はい。聖女にはそのようなスキルがあるんです」
[女神降臨]
[詳細]
女神を降臨させる儀式スキル。
スキルの発動には使用者が[聖女]でなければならない。
触媒に[聖杯]、[聖水]、[血の聖痕]、[ロザリオ]、[女神聖書]の五つのアイテムが必須である。ひとつでも欠けている場合、このスキルは発動できない。
聖天空界より女神を降臨させる。
「ちょ、オーロラ。こんなのがあったのかよ!」
「ごめんなさい、クレミアさんの話を聞いて思い出したんです。そもそも、触媒が沢山必要なので……」
「在庫がないんだな?」
「そうです。集めていただければ降臨可能かと!」
「それだ!」
女神降臨。それしかないだろ!!
オーロラに女神を呼んでもらい、ゼルファードを守護してもらうんだ。さすがの王国も女神の力には勝てないはずだ。
今は藁にも縋る思い。やるしかない……!




