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始祖竜になりました  作者: ユウギリ
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説得


 その後、ドゥーダは愚痴を吐き出し切ると同時に酔い潰れて寝てしまった。


「まさか、ドゥーダの方が先に酔い潰れるとは……。あんちゃん、あんたいったい何者(なにもん)だ?」

「やだなぁ、ただ単に酔わない体質ってだけですよ」

「いや、100杯以上飲んで平然としてるなんて、酔わない体質だけじゃ説明つかねぇぞ?」


 まぁ、うん、確かにその通りだ。


 酔わない体質とはいえ、100杯以上も飲めば多少は酔うはずだ。


 それでも酔わなかったのは、元々ガユードには状態異常を無効にする能力が備わってるから、それが働いたんだと思う。


 その辺は設定してなかったんだけど、酔う状態も状態異常に入るらしい。


 だったら酔わない体質設定はいらなかった気がするけど、今どうこう言っても遅いから考えないことにする。


「そんなことより、代金払いますね」


 もう答えるのも面倒になった俺は、《空間収納/スペースインベントリ》を使ってリオンから貰った金貨がたんまり入った袋を取り出す。


 そして店主の前に置き、リオンにはすべて使っていいと言われているので「お釣りは要りませんから」と言いつつドゥーダを担ぐ。


「あんちゃん、ほんとに何者(なにもん)だ?」


 ドゥーダを軽々と担ぐ俺を見て、店主が訊ねてくる。


 それに対し、俺は店主の方を見てニッコリとしながら「また来ます」とだけ言って店を出た。


 だって、答えるのめんどかったんだから仕方ない。


 ◆


 ドゥーダを城の自室に送り届けた俺は一旦屋敷に戻ることにした。


 転移の魔法を使って玄関前に転移すれば、待ち構えていたかのようにドアが開かれた。


 出迎えてくれたのはヘリナだった。


「お帰りなさいませ、ガユード様。どうでしたか?」

「無事、勇者パーティーに同行することになったぞ」

「そうですか。それはなによりです」


 そう言ってニコッと笑うヘリナ。可愛い。


「ところでガユード様」

「なんだ?」

「昼間からのお酒は、働かず飲み歩いているダメな人と間違われるのでよくないと思います」


 飲みに行ったことを知ってるってことは、影から覗いていたな。


 それよりも――


「そんなに臭うのか……?」


 そう言いながら反射的に自分の臭いを嗅ぐ。


「確かに臭いますが、そういうことではありません」


 えっ、違うの?


 っていうか、臭ってはいるんだな……。


 ちょっとショック。


「私が言いたいのは、始祖竜であると話したにもかかわらず、なぜ私も連れていってくださらなかったのですか、ということです」


 あ、なるほど、一緒に行きたかったのか。


「すまない。今度からは一緒に行こう」

「はい。約束ですよ」


 再びニコッと笑うヘリナ。可愛い。


 するとそこへ――


「その時は私も連れてってよね!」


 と言いながらサリーシャが飛び出してきた。


 その直後、「うわっ、お酒臭いわよ!? どれだけ飲んだのよ!」と鼻を摘まみながら言われた。


 可愛い子にそんな仕草をされながら言われるとショックがデカイんだけど……。


 さすがにこれ以上傷つきたくはないので、《消臭/デオドラント》を自分に使い、お酒の臭いを消した。


「コホン。それより、ヘリナとサリーシャは儂が勇者パーティーに同行している間、留守番を頼む」

「ガユード様、それでは身の回りのお世話ができません。私も連れていってください」

「わ、私だって役に立ちたいんだから、連れていきなさいよ……!」

「ダメだ」


 くっ、なんでこの二人はこんなに可愛いんだ!


 我ながらグッジョブな設定したな。


 でも連れては行けない。


 なんせ勇者があれだから、ヘリナとサリーシャの初めてどころか二人の心を奪われかねない。


 寝とられで興奮する性癖なんて持ってないから、断固として連れては行かない。


 というか、なんでガユードは人間の姿で行為ができないんだよ!


 誰だよ、こんな設定にした奴! あ、俺か。


「ガユード様、なぜですか? 私達がお邪魔なのですか?」

「いやそうではない。実はな……」


 そう言って俺は、勇者を見て〝美人・美少女なら誰彼構わず行為に及ぶ変態男だと感じた〟ということを話した。


「それに聞いた話では、最初は嫌がっていたはずの女性が一回行為に及んだだけでぞっこんになったという。そんな奴と誰が見ても可愛いお前達を一緒にいさせたくない」


 これで、ガユードの中身が異世界人だということを隠しつつも事実を伝えられたはずだ。


 二人の反応を見るとどちらも顔を赤くしていた。


 なぜ?


「か、可愛い、ですか……?」

「な、なんでそういうこと言うのよ!?」


 へっ? ……あっ、二人をアイツ(陽向)に取られたくなくて、つい本音を溢してしまった。


「すまない、少し口が滑った。気に障ったなら謝る」

「決してそのようなことはありません。とても、とても嬉しいです……!」

「わ、私は嬉しくなんかないんだからね! ……でも、礼は言うわ」


 俺が謝ろうとすると、二者二様(?)の反応をする。


 俺は今、女の子を攻略する系のゲームでもプレイしてるんだろうか?


 そう錯覚してしまうほど、二人がそういうゲームに出てくる女の子に見える。


 ヘリナは親愛度がMAXになってプレイヤーに素直に気持ちを伝えるようになった子で、サリーシャはまだ親愛度が低くてツンツンしてるけど好意はある子、みたいな。


「コホン。まぁ、そういうわけだから一緒に連れていくことはできない」

「わかりました。留守番はお任せください」

「そうね。仕方なく、留守番してあげる」


 ヘリナは目を輝かせ、サリーシャはツンツンしつつもどこか嬉しそうな様子だ。


 二人とも内心では喜んでるんですね、わかります。


 ほんとこの二人は可愛すぎる。


 二度目だけど、我ながらグッジョブ設定。


 過去に戻ってこの二人を設定した時の自分を褒めてやりたい。



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