40.みずほ銀行
みずほ銀行富山支店に到着すると、私は浜とともに支店長へ事情を説明した。
Xの書き込みを見せながら、できるだけ不安を煽らないように言葉を選ぶ。
「現時点では悪質な冗談の可能性が高いです。
ただ、念のための見回りですので、通常業務のままお願いします」
支店長は緊張した面持ちで頷いた。
「わ、分かりました……行員にも共有しておきます」
行内を見渡すと、すぐに気になる人物が目に入った。
ロビーの椅子に座り、ATMにも窓口にも向かわず、ただスマホを握りしめて周囲をキョロキョロしている若い男。
足元には黒いリュック。
「浜、あれ」
「怪しいね」
私は男の元へ歩み寄った。
「富山西署の者です。少しよろしいですか?」
「えっ……な、なんですか」
近くで見ると、挙動不審というより“落ち着きがない”という印象だ。
番号札も持っていない。
「今日はどのようなご用件で? 銀行の利用は?」
「あっ、えっと……ど、動画配信です! 友達から『ここで事件が起きるかも』って聞いて……」
詳しく聞くと、グランドプラザにいる友人から
「銀行で事件が起きたら絶対バズる」と言われ、
その友人も白奈と同じような推理で「みずほ銀行が一番可能性が高い」と考えたらしい。
(……白奈の読み、当たってるな)
念のためリュックの中身を確認させてもらうと、
中にはDJI製の小型カメラや配信用の機材がぎっしり。
武器になるようなものは一切なかった。
「協力ありがとう。もう大丈夫だ」
男は安堵したように頭を下げ、私は浜の元へ戻った。
「ただの配信者だったな」
「でも、こういう“匂いを嗅ぎつける人”が来てるってことは……
本当に何か起きる可能性、ゼロじゃないね」
浜の言葉に、胸の奥がざわつく。
冗談で終わってくれればいい。
だが、もし本当に誰かが動いているのだとしたら。
私は銀行の出入口を見つめながら、
これから起こるかもしれない“最悪”を想像していた。




