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怪傑!OLレンジャー☆ごくごく普通の働き女子が迷惑なあいつをこらしめる!  作者: 高山流水(高山シオン)
ブルーな雨の朝だけどアラサー干物女いきなりの胸キュン予感!?
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「ないない!」


思わず口走っていた。慌てて口をおさえたが遅い。もう出ちゃった。


「ですよねー」


何故かヒガシ君が相槌を打っている。


「さすがに、普通だったら、これぐらいの雨じゃ電車は止まらないですよね」


「え?」三樹がキョトンとする。

「え?」つられて、ヒガシ君もキョトンとした。


お互いにぽかんと見詰めあう。そこでまた、熱病のようにぶり返す言葉――


(突然のキス)


 唇がむずむずする。目が勝手にヒガシ君の口元を見てしまう。若々しい血色のいい唇はふっくらとしていて、わずかに白い歯がこぼれている。


(あぁん、おいしそうっ!)

(って、そうじゃないだろ!落ち着け。正気を取り戻すんだ!)

(ヒガシ君はないわ!年下だし!)


 ひとり勝手にテンパっている三樹を、ヒガシ君は笑顔で見守っている。その笑顔がいい。


(ヒガシ君!ほんとうに可愛いんだからっ!もう、食べちゃいたい!……って、うおー!)


 ひとりで勝手に想像して、勝手にヒートアップしている。これは本格的にアホだ。


よし、アホの標本を作って、上野の博物館に展示させてもらおう。


「町田主任」

 ヒガシ君が呼んだ。


「はいっ!」

 我に返った三樹が、新人研修のお手本のような返事をする。


頬が熱い。はずかしい。それはもう、いろんな意味で。


ヒガシ君はというと、三樹のそんな内情を知る由もなく、ひたすら楽しそうにニコニコしながら言った。


「あの、水沢さんて……」


「やだ、言わないでくださいよぉ」

 水沢が割って入ってきた。


それどころか、手を伸ばして、かわいいヒガシ君の口をふさごうとしている。


三樹がイラッとする。


(お前の汚い手で、ヒガシ君の口元に触るんじゃないよ!私だって触りたいわよっ!その時は、手でなんかじゃなくて……)


 三樹の煩悩がアンストッパブル。整備不良でブレーキが壊れた自転車みたいだ。こうなったら、その辺のごみ置き場に突っ込んで止まるしかないだろう。


当の水沢は、手をバタバタさせたりして、必死にヒガシ君が何かを喋ろうとするのを止めているらしい……。


が、いまいち本気っぽさが感じられないというか、身が入っていないというか。


しいて言えば、まわりの目を気にした、かわいい必死さだ。

あたし、可愛い女の子でしょアピール。

なんという計算高さ。


(はいはい。そうね、可愛いわね)

(ほんとうにシラケる)


一方、背の高いヒガシ君は、それを軽くかわしながら、笑顔で、

「いいじゃんいいじゃん」


「だめですぅ。言わないって約束したじゃないですかぁ」


「え?そんなこと言ってないよ」


「ひっどぉい!」


 水沢がチークをぬった頬を膨らませて、プンスカしている。両手を握りしめて、ぶんぶん振っている。


(出た!また可愛いアピールだ。うぜぇ……!)


ヒガシ君はおもしろそうにニコニコしている。


(ヒガシ君も水沢のこと、可愛いとか思ってるんだろうな……。男って、きっと、みんな、そうなのね……残念……)


ふたりのやり取りを見ている三樹は、どこか遠いところに置き去りにされた感じだ。


たそがれ時の河原で、アコースティックギターを抱えて、切ない系の歌をくちずさんじゃいそう。


でも切ないだけじゃないの、どこかデカダンスっていうか、サビの部分ではジャカジャカかき鳴らしちゃう感じで、叫んじゃう感じで、シラケたこの世界に唾を吐きかけちゃうぜ、的な?はっ、バカバカしい……遠い目。


(なんだそりゃ)

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