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第四十六話 赤黒い山

 魔王城を出て数十分後、土を固めた茶色く広い道を全速力で駆ける馬を見つけた。

 鹿毛の馬に乗った白い軍服の男、あれだ。


「リリス、あの馬だ」


「あい分かった」


 リリスが飛行速度を上げ、馬に追いついた。

 リリスは腕を片方外し、指先からに火の弾を作った。

 支えが減った体が不安定になる。

 

 弾は馬に当たり、乗っていた男もろとも吹き飛んだ。

 横倒しになった馬は、焦げた足を引きずりながら逃げていく。


 投げ出された男は衝撃で動けないのかうずくまっている。


「手、放していいぞ」


 リリスが俺から腕を放した。

 重力に体が引っ張られる。

 俺は偵察の近くに飛び降りた。

 

「気を失っとるようじゃの」


 翼をゆっくりと上下させながら降りてきたリリスが言った。

 

「ああ……」


 偵察から聞き出せることは、アレナから聞き出すことが出来るだろう。

 こいつに利用価値はない。


 殺すか。


 土人形に埋め込むためにジョンの赤い髪の毛を切り、魔法を発動させた。

 地面がジョンそっくりの人間になっていく。

 リリスの火の弾で焦げた軍服を修復し、土人形に着せた。


「こいつに代わりに王都に行ってもらおう」


「すごいの、人間を作れるのかえ」


「この魔法を見るのは初めてだったか?」


「うむ」


 魔族も魔法で生き物を造り出すことは出来ないらしい。

 俺が思っているより人間と魔族の使う魔法に違いはないのかもな。


「馬がねえな」


 ジョンが乗っていた馬はリリスの攻撃を受けて逃げ出してしまった。

 歩いて王都に向かうこともできなくはないだろうが、馬の5倍は時間がかかる。

 怪しんだ王都の軍に更に兵を送られるかもしれない。


 魔法で似た馬も作り、土人形を乗せた。

 馬を作るのは初めてだ。

 参考にする本物も居ない。


「リリス、これは馬だよな」


「ちゃんと馬に見えるぞ!」


 蹄の形、耳の形、鼻の位置……曖昧だがしょうがない。

世話をする奴にはバレるかもな。

 馬を作った後、ジョンの土人形(ソルムと名付けた)に向き合い言った。


「何を報告すればいいかは分かるな?」


 きっちりとした軍服に身を包んだソルムが、丁寧にお辞儀をして言った。


「はい、ジョンの振りをし、魔王城には何もいなかったと伝えます」


「頼むぜ」


 ジョンの姿をした土人形、ソムスが王都に向かって走り出した。


「さて、こいつはどうするか」


 ジョンは装備を剥かれて裸になっている。

 気を失って土にまみれて転がっていた。


「殺すのかえ?」


「ああ。もう用もねえしな」 


「食べてもいいか!?」


 リリスが目を輝かせて無邪気に言った。

 そういえば人間を食べたいと言っていたな。

 城の前じゃ我慢させちまったしいいだろう。

 死体の処理にも困らなくなる。


「構わねえ」


 ゴーサインを出した途端、リリスは喜びの声を上げ気絶したジョンに駆け寄った。


 ジョンの体に覆いかぶさると口を大きく開き……開く、という言葉では足らないな。

 人間の頭を収められるくらいに頭部を変形させた。

 口が裂け、耳の寸前までパックリと開いている。


 他にもっとうまいものがありそうなもんだが。

 俺はそれはうまそうに人間を頭から丸のみするリリスを見て思った。


 ◇


「お帰りなさい! 賢者さん、リリスちゃん!」


 偵察の兵士を始末した後、俺たちは魔王城に帰った。

 アンジュとテラが城の前、先ほど戦闘があった場所で俺たちを出迎えた。

 ゴーレムの動きを止めた氷の魔法が溶け、岩の巨人だった土の塊は水を吸って泥となっている。


 暖かな昼下がりの太陽の光が、焦げと血で赤黒い死体の山を不釣り合いに照らしていた。


「ただいまじゃ!」


 リリスがアンジュに向かって返事をする。

 リリスの腕から離れ、地面に着地した。


「あれ? リリスちゃん、口元赤いですよ?」


 リリスを見たアンジュが言った。

 口元についた血液以外、リリスの見た目はこの魔王城を出た時とほとんど変わっていない。

 ジョンを丸呑みしたことで膨れた腹は、瞬く間に元通りの括れた腰になっていた。

 細い体のどこに吸収されたんだろうな。

 魔族は使う魔法も、体の作りも、人間の想像を超えている。


「人間を食べたからの!」


「そうなんですか!」


 人間を食べた、と言う魔族らしい言葉に怯まずアンジュはあっさりとそう返した。


「あれから誰も来なかったか?」


「はい。ここで見張ってましたが、鹿が駆けていった以外、生き物は通りませんでした」


「そうか」


 アンジュに確認した後、魔王城の前に出来た死体の山に向かい、土人形を作る作業を開始した。

 三十人、結構な量だ。


「賢者さん、何かお手伝いできることはありますか?」


 死体の山の麓に立ち、黙々と魔法を発動させる俺を見てアンジュが言った。


「そうだな……この積み重なった死体を、地面に一列に並べてくれ」


「分かりました!」


 アンジュが一番下にあった死体の両足を引っ張り、横にして地面に置いた。


 リリスの火で中途半端に焦げ、血液で真っ赤に染まった服で王都に帰すわけにはいかない。

 王都にこいつらを向かわせるなら、服も作らなければならない。


 日付が変わる前に終わると良い、と思いながら俺は呪文を詠唱した。


読んでくださりありがとうございます。

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