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孤独の辺境騎士団  作者: おんすい
第2章 鉱山遠征
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第25話「嵐の前の静けさ」

 「みんな、フォーメーションAだ!」


 アライブは真顔で指示を出す。


 「……なぁアライブ。そのダサいネーミング何とかならないのか?」


 一応は従うライセングが聞く。


 「あ、アライブは昔からこういうのだから、その、個性として受け取ってあげてほしいな!」

 「エル、それあんまりフォローになってないんだが……」


 アライブは目を細めてエルを見る。エルはサッと目を逸らし、吹けもしない口笛を吹いている。


 「それよりも!」


 突然キッチルが切り出す。


 「アライブ! ここどこなんです? 流石に適当に回り過ぎです!」


 キッチルはジッとアライブを見つめる。


 「あ、え、あー……もうちょっとで着くはずなんだけどなぁ……」


 と、アライブは目を泳がせる。しかしキッチルは全く動じず、アライブに詰め寄った。


 「まさか久しぶりの故郷に心躍らせてるんじゃないですか?」

 「えっと……その……」


 アライブが返答に困っていると、背中のアカが顔を覗かせた。


 「キッチル姉ちゃん。だんちょーはアカが復活するまで敵に合わないようにしてくれてるんだよ。ね、だんちょー」


 突然話を振られたアライブは慌てながらアカに話を合わせる。


 「そ、そういう事だ。戦力が減ったままじゃ戦いにくいだろ?」


 と言うとキッチルは、


 「ふーん?」


 とアライブを睨んで自分の持ち場に戻った。


 「あー怖かった。ありがとな、アカ」


 アライブがアカの頭を撫でるとアカは嬉しそうにアライブの頭を叩いた。


 「いや痛い痛い。分かったから、分かったから!」

 「だんちょーったらツンデレなんだから」

 「……その言葉どこで覚えたんだ……?」


 アライブの質問にアカは思い切り無視して背中ではしゃぎ続ける。


 「アカ、その感じだとそろそろ治ったか? 治ったんなら下に降りて……」


 と、言うとアカはピタッと動きを止め、


 「な、治ってないよ……」


 と、アライブの首を絞める勢いで背中にしがみついた。


 「な、ならまだ背中に……首が、首が絞まってるって!」


 アライブは、ギブギブと手を叩いた。

 それは、いつもの風景だった。




            *



 少し進むと街を流れる川を見つけた。


 「こりゃいい。俺の記憶が正しければこの川は街の中心部に向かって流れているはずだ」


 アライブは自信満々な顔でこちらを振り向いた。


 「本当か!?」


 ライセングは目を輝かせる。


 「本当だぞライセング。これでとりあえず何とかなりそうだ」


 と言うとアライブは川の側の道を歩き出した。


 「ん! ライ! ライ! 川にお魚さんがいるよ!」


 ライセングに肩車されているアオが川を指差した。


 「おー、本当だ。泳いでるの見るのは久しぶりだな……」


 ライセングが川の中を覗き込んでみると、魚がたくさん泳いでいた。


 「ちょっと待って!」


 と、エルが川を覗き込んで叫んだ。


 「どうしたエル? 珍しく魚でもいたか?」


 と、アライブがエルの元に近寄った。その瞬間、エルが顔を上げた。


 「?! エル、目が……」


 マルカスはエルの目が赤く光っていることに気が付いた。


 「気安く呼ぶな三下!」


 エルは叫ぶと、最大パワーで放電した。


 「いきなりどうした! キッチル、バリアを!」


 アライブは咄嗟に電撃をかわすと、近くの建物の陰に隠れる。キッチルのバリアは間に合わない。


 アライブはアカを抱いて建物の間をよじ登る。屋根まで来ると、エルの位置を捕捉した。

 しかし……


 「だんちょー! エルが倒れてる!」


 アカは指を指すとアライブを見た。


 「本当だ、何があった?」


 と言い、屋根から飛び降りた。他のメンバーも建物の中から顔を出した。



            *



 「エル……エル……!」


 エルは気を取り戻した。目はまだ虚ろだ。


 「大丈夫か? どうしたんだ急に……」


 アライブがエルに飲み物を渡しながら聞いた。


 「それより……マルカス達は……?」

 「その心配はいらない。彼らには周辺の調査兼護衛を任せた。そのうち戻ってくる」


 エルは一息つくと、良かった、と言い出来事を話し出した。


 「川に魚がいるって言うから覗いてみたんだよ。そしたらそれは魚じゃなかった。多分精神混乱を起こす特殊攻撃だったんだ。多分アオとライセングが見ても反応しなかったのは、対人間用の攻撃だったからだと思う。こんな攻撃久しぶりだから油断しちゃった……ごめんね」


 アライブは特殊眼鏡をかけて川底を覗いて見た。そこには確かに魚型の特殊攻撃が撒き散らしてあった。


 「アライブ! 怪しい人影を見つけた。この川を上っていったよ。多分トイランの幹部クラスだ。雰囲気でわかる」


 走って戻ってきたマルカスが早口で報告した。


 「ありがとうマルカス」


 アライブはマルカスに礼を言うと、エルに手を差し伸べた。


 「こんなとこで終わるような奴とタッグ組んだ覚えは無いなぁ」


 と、アライブが言うと、


 「あ、当たり前じゃん! わたしを誰だと思ってるの」


 エルは顔を少し赤らめて立ち上がった。いつの間にか、他のメンバーも戻ってきていた。


 「話は聞いた、特殊眼鏡をかけるしかないか……俺たちには効果が無いらしいから、ここは俺たちに任せてくれよ」


 と、ライセングが親指を立てると、後ろのアオもニッと笑った。


 「ありがとう、ライセング、アオ」


 エルが柔らかく笑うと、ライセングは少し驚いた顔をした。


 「へぇ、珍しいね、素直なエル」


 と言うと、ライセングはニヤリと笑い、川の側の道を進み始めた。


 「アライブ、川を上ればいいんだよな? それなら任せてくれよ」


 アオは、歩くライセングの代わりに、後ろを向いて、ニヘヘっと笑ってみせた。


 しかし、全員の顔が引き締まる。

 街中は嫌なほど静かだった……。

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