第23話「狐の姉」
アライブ一行は、敵陣に乗り込む特攻を任された。が、現在街の中で迷子になっている。
「アライブよぉ、これは足引っ張るぞ」
ライセングが言う。
確かにそうだが、分からないものは分からない。アライブ達は隠れるため街の細い路地に入る。
「さっきから遠距離攻撃が多いな……」
息を荒げながらライセングは空を見上げる。
「どこかから俺たちが見えてるみたいに正確だ。そろそろキッチルのバリアもキツイんじゃないのか?」
先程からずっと前方でバリアを張り続けているキッチルは、もう限界のようだ。
「だんちょー、ちょっと屋根に登っていい?」
アカが目をキラキラさせて聞いてきた。
「ちょっとだけだぞ。危なかったらすぐ戻ってくるんだ」
はーい、とアカは手を挙げて返事をすると、家の壁を軽々と飛び移り、屋根に登った。
「アカ、何か見えるか!」
下からアライブの声が聞こえる。
「えっとねぇ……少し向こうに変な人たちが何人かいるよ、あとは分からない」
そう言うと、アカは屋根からぴょんと飛び降り、ライセングの上に乗った。
「黒い服着た人たちがこっちに来てるよ」
アライブはそれを聞き、壁から少し覗いてみた。すると、その通り、少し先の所に人がいる。見たことのない人達だ。敵陣か……?
「ねー、だんちょー、そろそろこれ取っていい?」
アカはクウォーテを触りながら聞いてくる。
「だからまだダメだ」
ライセングがアカを下に降ろしながら注意する。アカはまた膨れてしまった。
すると、急にアライブがこっちに来た。
「奴らが来た。多分亜人種だ。匂いで気付かれたらしい」
全員の顔が引き締まる。
「俺とエルとマルカスが裏に回る。ライセングとアカとアオとキッチルは正面を任せる。挟み撃ちで行こう」
アライブはそう言うと路地を走り出した。このまま裏を取る作戦だ。
「マルカス、後衛頼めるか?」
「任せてくれ」
アライブは親指を立てると、こちらに向けてきた。
「任せたぜ」
*
「ライ、ライ! これ外したい……」
ライセングがクウォーテを見ると、割れかけていた。流石にこの路地で外すのは危険と考え、
「そこの道に出た時に外していいよ」
と、言った。
アカは嬉しそうに跳ねてアオに自慢していた。一方のアオは、特殊型で新月の夜じゃないと覚醒しない。なので今回はライセングの背中にぶら下がって、ライセングの護衛になっている。
「おねーちゃん……無理しないでね」
「大丈夫よ、ライもいるし、キッチル姉ちゃんもいるからね!」
キッチルは、二人に笑ってみせた。能力は後衛なので、今回も徹底的に敵の妨害をするつもりだ。
と、ここで裏を取った合図がきた。みんなの持っている伝達用クウォーテが光った。これはある方法で光らせているのだが、キッチルとアライブしか知らない。
「きた……合図だ、それじゃあ行くぞ!」
ライセングは路地から飛び出る。目の前には四人の黒い服を着た人達。予想していたかのように、一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「まずいっ!」
慌てて路地に戻ったが、そこにアカの姿が無い。
「おい、アカはどこだ」
キッチルに聞こうとした瞬間、路地周辺だけが昼になったように明るくなった。
「ライ……大丈夫だよ」
道の方から声が聞こえる。ライセングは道に飛び出した。そこに居たのは覚醒状態のアカだった。アカは、身体が大きくなり、尻尾が八つ、ふわふわの毛に覆われた「狐」の姿だ。
「キッチル! 路地に戻るぞ!」
ライセングはキッチルを引っ張って路地に戻った。その瞬間、身が焼けるような熱さを感じた。
*
「それじゃあ行くか」
アライブ達は、敵の後ろ姿を確認すると、クウォーテを光らせ路地に飛び出た。敵は正面ばかりに気を取られ、格好の餌食だ。
「喰らえっ!」
アライブは炎攻撃で焼き尽くそうとしたのだが、道の上に見たことのない「狐」が圧倒的な破壊力を持つ炎攻撃を打ち込んできた。
「まずいっ! マルカスっ!」
マルカスは速攻でバリアを張るが、攻撃が強すぎて貫通してしまった。しかし、間一髪のところでエルが電気攻撃で炎を分散させ、避ける事が出来た。
「なんだよあれ……もしかしてアカなのか……?」
アライブ達三人は唖然としていた。アカと思われるその「狐」は、アライブの攻撃を上回る攻撃を打ち出した。しかも軽々と。
「おいおい……なんだあの化け物……」
すると、「狐」はこちらにやってくる。アライブ達は身構えた。
「狐」は近くまで来ると、アライブ達を見下ろし、口を開いた。が、
「だんちょー、見た? 見た? とぉっても強かったでしょ!」
「狐」の身体から毛が抜け落ちるように、白い塊が拡散し、中から小さなアカが出てきた。
「アカ!? 大丈夫なの?」
エルがキャッチすると、アカはニッと笑い、平気だよ、と答えた。
「まさかアカがこんな力を持ってたとは……」
アライブが感心していると、後ろからライセングとアオとキッチルが追いついてきた。
「すまん、アカが勝手に……」
「いや……大丈夫だが、アカは覚醒するとこんな感じになるのか?」
アライブ達とは活動時間が違うので、彼ら三人は全く知らなかった。
「まぁ、そうだな。その代わり体力の消費が激しいからすぐ戻っちまう」
ライセングは、まぁその方が安心するが、と呟きアカに睨まれていた。
「なるほど……それで、アカ。クウォーテは何処にやった?」
「あー……実は壊しちゃった」
アカはテヘッと舌を出してよそ見をした。
「アライブ、大丈夫だ。体力が少ないからまだ覚醒出来ない。当分の間は問題無いだろう」
「そうなのか、なら良かった」
アカはその間にこっそりアライブの背後に回ると、アライブに飛びついた。
「おいっ! アカ!」
「見て見てアオー! だんちょー号だよ!」
アライブはずっと抵抗し続けたが、結局アカが勝ってしまった。
「まぁ、体力回復するまでだぞ」
「やったー! 進めっだんちょー号!」
すっかりその気になってしまったアカを見ながら、正確には背中にいるのだが、まるで屋敷の中庭で遊んでるかのような雰囲気になっていた。
「それじゃあ先に進むか」
アライブが全員に声をかけると、もう他のメンバーは居なかった。
「おーい、アライブ。早く行くぞー」
遠くからマルカスの声が聞こえた。
「お、お前らいつの間に」
「アカと戯れるのもいいけど、先に任務だよ」
と、エルに叱られた。しかし、背中のアカは悪びれる素振りも見せず、相変わらずはしゃいでした。それがアライブを落ち着かせていたのだった。




