第四十話
崩れかけた葦垣の間を通り、裏へまわる。
左から一、二・・・
盛遠はばっ、と御簾を払った。
「・・・渡!」
暗い。暗すぎる。
しかし、茵の上にたしかに渡が立っている。
「なぜ、と思っているだろう?おまえは寝込みを襲うつもりで来たのだから」
「あいつは・・・」
「袈裟は、はなからおまえに協力するつもりなんてなかったのさ。その証拠に、ぼくはこうしておまえが来ることを知っていた」
「嘘だ・・・!」
盛遠は太刀に手をかけた。
真っ向から相手を斬りさげた。
闇を走り抜けた銀光は、刹那閃いただけだった。
渡も太刀を抜く素振りを見せたが、どうと倒れた。
盛遠は渡に近寄った。
おびただしい血潮が、足の裏にべちょりと不快な感覚をはりつかせる。
手探りで首の位置を確かめ、勢いよく切り落とした。
血の臭いが充満する。
視覚が役に立たぬかわりに、嗅覚が敏感になっている。
そうでなくとも、彼の神経は異常なほどに高ぶっているのだ。
盛遠は口をおさえた。
が、間にあわず吐き戻した。
「・・・袈裟・・・」
彼はつぶやいた。
どこにいるのだ。一緒に逃げようと言ってくれたではないか。
朦朧とした意識のなかを、彼は歩く。
「袈裟・・・」
「盛遠!」
暗黒のなかで、何者かとはち合わせした。
「わた・・・る・・・?」
月光が射し込む。
細い廊を照らしだす。
そこにいたのは、殺したはずの渡だった。
なぜ・・・
手に持っている首に目をやったとき、盛遠はすべての時が止まったのを感じた。




