最終章
歳月は流れ、十年後。崩壊した城や砦は取り壊され、新たに町が作られていった。減少した人口も徐々に戻り、戦争の爪痕が癒えた頃。
「さあ、今年もやってまいりました、職員対抗戦!実況は私、高等部に上がったばかりのクロエ・ローランドがお送りします!」
再建された学園都市は、かつての賑わいを取り戻していた。闘技場は役割を終え、かつて訓練場であった場所がその代理となった。観戦希望者は各々、望む場所でその戦いを見ている。
「なんと、今年は珍しくほぼ全職員が登録しております!それもそのはず、これまで欠場を続けていた試験官が、圧倒的支持を支えに、満を持して登録した為!では登場していただきましょう、下馬評ダントツの一位、レイル・トルマン試験官!」
訓練場に、その姿が舞い降りる。その映像を見守る生徒らは、誰もが歓声を上げていた。実力は圧倒的であり、教師としての能力も高い。何より、その英雄的伝説を耳にした生徒らが、こぞって彼の下へ指導を受けに行ったのだった。
「えーと、これまでは皇国からの依頼が重なり、出場を見送ってきたとのお話ですが。何故、このような祭りに参加していただけたのでしょうか?」
「エントリーした生徒の中に、何人か興味があるのがいてな。全員を一人で相手にしていいって聞いたから、軍の依頼は全部片付けてきた。職員にも面白い相手はいるんでな、モンスター相手よりは楽しく戦えるはずだ」
リュージュやゲイル、テリーらも今では、学園の教員として名を連ねている。彼らもまた、レイルが出ないなら、と今まで出場は見送っていた。早くも形骸化したイベントだったが、今年は違う。かつての大戦で名を上げた戦士が、続々と登場するのだから。
「ほら、お父さんが映ったわよ?こういう時、何て言うんだっけ?」
「パパー、頑張れー」
学園の一室で、一組の母娘が映像を見ていた。クロハ・トルマン、旧姓ライノルズ。レイルとの間に儲けた子供は健康に育ち、五歳を数えた。婚姻直後は学園に勤務していたものの、今では立派な主婦。ただし、頭に『最強の』という言葉は付くのだが。
「もう、本当に戦うのが好きなんだから。私に黙って出場するなんて、戻ってきたらお仕置きね?」
「おしおきー」
目指した世界は、もう手の届く所まで来ていた。これから先、俺が戦う理由なんて、殆ど無くなるだろう。でも、それでいい。守りたいと思った人、欲しかった温もりは、この手の中にあるのだから。




