表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Folktale-side DARKER-  作者: シブ
第二部
PR
48/74

第三十章

「なるほどな、死者を利用した肉体強化、か。以前、グラール王国が研究していた物だが、戦乱で国が滅亡、研究者は行方知れず。奴ら、それを掘り起こして利用しているのか」

「戦力としては、そう大した物ではない。数は多いが、個々だけで見れば、高水準である以外、特筆すべき能力は無い。無限に沸いてくるという事で、こちらが圧されている現状だ」

 とある城の、とある一室。私室であるにも関わらず、一人は重々しい甲冑を着込み、地図を広げていた。もう一人は扉の陰へ身を隠し、姿を現していない。それでも甲冑の男には、それが誰なのか、手に取るように解っていた。かつて戦場で命のやり取りをした、永遠の好敵手。それが味方に付くというのであれば、躊躇う理由は何も無い。現在判明している情報は全て、彼へと伝えていた。ミレ・クルーガーに続く、三人目の切り札。彼の動き如何によっては、戦争の終結時期は大きく変わる。早まるのか、それとも遅くなるか。

「ノイエめ、厄介な置き土産をしやがって。それより、本当にいいんだな?俺が気ままに動けば、貴様らの思い描いた絵図の通りになるとは限らないぞ」

「充分承知している。それさえ含め、完璧なまでに動かしてみせよう。こちらとしても、あまり舐められたまま終わらせる予定は無いのでな。時期が来れば、私自ら出る事になる。それまでに、舞台を整えておいてくれ」

 ここに、全ての役者が出揃った。後方と前線に出現した、幾つかの勢力。彼らの活動によって、身動きの取れない部隊は徐々に解放され、個別の動きを見せる。そしてそれは、戦況を更なる泥沼へと運んでいった―――。


「多少、予定とはずれて行ったが、概ねは粗筋通りだな。さて、準備は出来ているのか?」

「当然、万事が順調です。不足していた魔力は集まりましたし、術式の再現もほぼ終了しています。楽しみですねー、これを前にした奴らが、どんな反応をするのか!」

 それはかつて、帝国軍が使用していた術式だった。実行直前に術者の一人が死亡、以降は代理が見つからずに頓挫した、過去に類を見ない悪魔の兵器。指定した種族の魔力を強制的に暴走させ、封印・あるいは爆発させる、内部からも批判された物。それすらも手駒と加える辺りが、彼らの非道を物語っていた。

「説明なんていいからさ、さっさとやってくれない?玩具に逃げられてからずっと、退屈してたんだから。自由に殺させてくれるって聞いたから、おじさん達に協力してるんだよ?」

 語った少年は、以前レイルと遭遇した、幼い魔法使いだった。戦争を知らないが故に平和を憎み、生まれ育った故郷を壊滅させた、無邪気な悪魔。次の獲物を探し大陸中を彷徨っていた所で、リエン達に協力していたのだった。

「うーん、まだ魔力が足りませんね。大陸全部を覆うのは無理なので、取り敢えずですが、最も苦戦している箇所に発動しましょう。こんな楽しいゲーム、終わらせるのもつまらないですからね?」

「それに関する調整は、全て任せよう。重要なのはただ一点、魔族の殲滅だけだからな。私は戦場の選定と、戦略の微調整にあたる。次の作戦で戦線を押し戻し、奴らの首都へ至る為にな」

 ライラは踵を返し、自室へと戻っていった。研究と開発が行われている部屋は、丁度正反対に位置する。玉座を使用しないのは、未だに自身が王となれていない為だ、とこぼしていた。自身の誇りと実用性を天秤にかけ、軽い方を排除する。彼の人生はまさに、それの繰り返しだった。


「陛下、緊急のご報告です。ムラート城塞攻略部隊、全滅しました!」

 ルーカスの居城で、リーエは様々な雑務に追われていた。戦時下といえど、多様な陳情はそれこそ山のように舞い込む。国に対する要望は全て確認し、それぞれに返答をする、という彼女の方針。為政者としては甘いと言われるが、それを変えるつもりは毛程もない。そしてそれが、民衆の信頼が厚い所以でもある。

「あそこへは、十分すぎる程の軍勢を送ったはずだが?詳しく聞こう、話せ」

 大陸に整備された街道は、危険な場所を避け、細かく整備されている。モンスターの巣や縄張りが主な要因だが、都市や集落をほぼ完全に結んでおり、要所に砦や城が配置されていた。そして、帝国軍の領地へ侵攻する為、その足がかりとなる場所が、ムラート城塞。周囲を山と海に囲まれた、難攻不落とも呼ばれる城である。それ故に、そこへは主力部隊の半分を注ぎ込んでいたのだった。

「それが突如、兵の魔力が枯渇し、一部は爆死したとの報告です。ただ数名が生き残り、早馬を飛ばしたのですが―――」

 辿り着いた最後の一人も、報告と同時に力尽き、倒れたと門番は告げる。損害は計り知れず、同時にその悲しみもまた深い。リーエの優しさ故に、たとえそれが部下であっても、その痛みを全て一身に請け負っていた。

「そうか……。すまんが、アッシュをここへ。状況説明も、併せて頼む。急げよ、事態は一刻を争う」

「その必要は無い。久しぶりだな、魔族のお姫様?いや、今は皇帝陛下だったか」

 現れたのは、かつて戦場で幾度となく見えた、最悪の敵。その度に敗北を味わい、今はいない片腕によって窮地を脱してきた、敬意を払うべき好敵手の姿だった。

「ジェノス・ダークレイ―――、やはり生きていたのですか」

「当然、元同僚と部下にやられるようじゃ、切り札は名乗れないんでな。状況は聞いた、援軍を送るのはやめておけ。俺の直感だがな、また同じ事になる。道中にある城の通行許可をくれるなら、俺が行く。それとも、この名じゃ力不足かな?」

 使用された術式は、魔族に対しての物。それならば、ヒトである彼が行くというのは、現状では最善策と思えた。本来であれば、軍にとって無関係の存在。それでも今のリーエにとって、彼の申し出は願ってもない物であった。

「決まりだな。前線にいる魔族の部隊は、グレイルの辺りまで下がらせろ。半魔族も同じだ、俺の知っている限りでは、そこならアレは撃ち込めない。大陸有数の商業都市な上に、歴代帝国王の生まれ故郷だ。帝国軍を名乗る以上、聖地を攻撃する馬鹿はいないだろう」

「ここは結界の作用で、防御に不安は無い」と、彼は続けた。ある人物により張られた、攻撃性魔法に対する、最大の防御。それが幾重にも重なる以上、この街に脅威が訪れる可能性は皆無であった。

「今の我々では、総攻撃を受けた場合に対する備えが、ほぼありません。今程に、自分の無力さを嘆く日は、そう来ないでしょう……。部外者ばかりに協力を申し出され、情けない限りです」

「逆に考えろ。それ程まで、信頼が厚い証拠だ、とな。俺もそいつらも、帝国側が正しいと思えば、そっちに付く。もしうだうだと悩むようなら、今度は俺や他の連中が反乱を起こすぞ」

 それだけ言い残し、ジェノスは玉座を後にした。確かな信念に裏打ちされた、もう一人の英雄。貫くのは、過去に刻んだ、自身の覚悟とその意思のみ。それが告げる敵とは、かつての自分がいた、当時の最善だった場所。過去の遺物を打ち砕く為、彼は再度、戦場へと旅立っていく。

九月で終わるはず、だったのに……。

いろいろと修正、かつ仕事が忙しくなり、ここまで伸びてしまいました。


でもまだ続きます。

最後までお付き合いいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ