第十三章
「『闇の覇者よ、我が身を喰らいて、その身をここへ示せ。君臨者よ、漆黒を抱き、虚空に座せ。闇を纏い、光を喰らえ。孤高の王よ、全て滅ぼし、地を滅却せよ。開け、ドラゴン・ゲート』」
空中に現れた、巨大な穴。そこから出てくる物は全て、古代の竜王種ばかり。かつて地上、空を支配した竜種の王達が、城の中を駆け巡り、あらゆる物を焼き払う。改造を受けた兵士らもまた、例外無くその姿を消し炭と化していった……。膨大な魔力を消費するそれを扱えるのは、彼の魔剣に内包する魔力を吸い取られていた為。枷を外した彼は、下級兵程度が抑える術は存在しない―――はずだった。
「『薙ぎ払え、地獄の業火。永久の渇きを与え、魔を滅せよ』」
遠くから聞こえる、魔法の詠唱。蹂躙していたはずのドラゴンの姿は、その全てが砂となり、消えていく。対召喚魔専用の術式、《楽園の灯火》。大陸最東端の地方、ゲーランドと呼ばれる場所で開発された、彼ら独自の魔法。最も、その住民らは魔法とは呼ばず、術と呼称しているのだが。
「ふーん、魔族っていっても、この程度なんだ?あのおじさん達、意外と大したことないんだね。僕なら、五分もあれば倒せるよ」
レイルとそう変わらないであろう年齢の、少年がそこにいた。最上級の召喚さえ無力化する程の、天から与えられた才能。それを前に、レイルは身震いした。自身の力が及ばない、圧倒的強者を前にした喜びで。向かえば死を覚悟する状況を前に、彼が取った行動は、この場からの逃走。
「なーんだ、逃げられちゃった。まあ、今度会った時は、絶対に死んでもらうけど。それにしても、預かってた玩具、殆ど壊されちゃうなんて。おじさん達に言ったら、怒られるかな?」
かつてヒトであったモノ。それらの屍を前に、少年は明るく笑った。平和という文字を憎み、戦争を笑う彼。その歪んだ心が救われる日は、果たして来るのか……。
「流石にあれは、俺一人じゃ手に負えないか。正直に話せば、あいつらは付いてくるって言い出すだろうし。さて、どうする、俺?」
城の遥か北側。反射的に逃走したレイルは、ほぼ一瞬のうちにそこまで辿り着いていた。リュージュらを待たせている場所までは、そこから数分で見えてくる位置。吹く風は塩の匂いを運び、海が近い事を知らせる。その海には、夥しいまでの血が混ざり、本来の青を紫に近い物としていた……。




