第1話 初めての乙女ゲー「ときクラ」
四葉達彦はライトゲーマーだ。
仕事を終えると男性向けの有名タイトルのゲームをたまに遊ぶ。友達と集まった時にパーティーゲームを少しやる。スマホゲームも話題になったのをたまに少し遊んでみる。
その程度のライトゲーマーだ。
そんな彼が珍しく乙女ゲームをやってみたくなった。
理由は、パッケージに描かれた主人公の女の子が好みど真ん中だった、それだけ。
乙女ゲーをやったことのなかった達彦は期待しないで「恋のときめきファンタジー・クライシス」、通称「ときクラ」をプレイし始めた。
最初は良かった。女性主人公の独白や攻略者達との会話も新鮮に感じ、ファンタジーらしい戦闘システムが導入されていた事もあり、普段のゲームと同じくらいには楽しく遊べていた。
しかし、中盤で雲行きが怪しくなった。
攻略対象者達が次々と病み始めたのだ。
君がいなければ生きていけないだのお前に拒否権はない俺に従えだの君には僕さえいればいいだの、俗に言うヤンデレ……と言うより単純に病んでるキャラしかいないのだ。
パッケージにはそんな事ひと言も書かれておらず、説明書も読み直したがキラキラした恋愛ゲームそのものだった。
達彦は主人公が幸せになるエンディングを期待して全キャラのエンディングとハーレムエンド、バッドエンドまで確認するほどやり込んだが、結局ハッピーエンドは一つもなかった。
「病んでる奴しかいないバッドエンドゲーなら最初からそう書いといてくれよ!」
達彦はそう嘆き、ふて寝した。
そして目が覚めると赤ちゃんになっていた。
よく見えない目、周囲から聞こえる聞き慣れない言葉、まともに喋れない口、上手く動かせない身体。
そして身体の中に感じる何か。
訳がわからない状況に混乱し、何かを訴えるように泣き叫ぶことしかできない。
そんな普通の赤子と同じような始まりが彼の次の人生だった。
後に身体の中にあるそれが魔力だと分かるのだが、それはしばらく後の話である。
ちなみに「ときクラ」は、ネットでは彼と同じようにハッピーエンドを期待して裏切られたプレイヤーが大勢いてクレームを送る者もいたが、一部のコアなファンからは絶賛されていた。




