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第四章最終話:異世界は舞台になる

その日の夜。

アパートへ帰った私は、ベッドの上に倒れ込んだ。

「疲れた……」

主役決定。

しかも、だいちゃん役とクロさん役まで兼任。

思い出しただけで胃が痛い。

私は枕に顔を埋めた。

数秒後。

スマホの通知音が鳴る。

見ると舞香からだった。

『完成版できた』

添付されたPDF。

タイトルは――

『異世界接続者(仮)』

だった。

私は少しだけ迷ったあと、ファイルを開く。

一ページ目。

ドラゴン討伐へ旅立つAランク冒険者。

沢木が演じることを前提に書かれたその場面は、やたらと格好良かった。

思わず苦笑する。

「沢木、絶対喜ぶなぁ……」

ページをめくる。

暗転。

現代。

ライブ配信。

だいちゃん。

そして――

私。

異世界。

クロさん。

ギルド。

時計。

アクセサリー。

Aランク冒険者への取材。

勇者の称号。

復活の呪い。

ここ数週間で経験した出来事が、次々と物語になっていた。

不思議な気分だった。

全部、本当にあったことだ。

それなのに。

台本として読むと、まるで最初から誰かが作った物語みたいに見える。

私は最後のページを開く。

そこには舞香らしい締めの一文が書かれていた。

『現実に存在する異世界なんて、最高に面白いじゃん』

思わず笑ってしまう。

本当に、あいつらしい。

スマホが震えた。

今度はメッセージだった。

『どう?』

私は少し考えてから返す。

『悔しいけど面白い』

すぐに既読が付いた。

『でしょ』

それだけだった。



私はスマホを置く。

そして机の上へ視線を向けた。

そこには、あの百均のデジタル時計。

異世界へ持ち込んだはずなのに。

現実にも存在している時計。

異世界にも存在している時計。

私はぼんやりと液晶を見る。

時刻は静かに進んでいた。

勇者の復活。

リンク切断。

アクセサリー。

そして、この時計。

脚本は完成した。

でも――

異世界の謎は、何ひとつ解けていない。

その時。

スマホが再び震えた。

舞香からだった。

『そういえば』

嫌な予感がした。

『時計の件』

やっぱりだ。

『勇者の件』

やっぱりだ。

『アクセサリーの件』

やっぱりだ。

『まだ全然終わってないからね』

私は天井を見上げた。

数秒考える。

そして、小さく呟いた。

「終わったと思ったのになぁ……」

すぐに返事が来る。

『新章、取材開始!』

私は枕を抱えて転がった。

異世界は舞台になった。

けれど。

私たちの異世界調査は、まだ終わりそうになかった。


第四章 完

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