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【休載中】(初稿版)本能寺は止めない、だが光秀は死なせない 〜未来を知る将軍・足利義昭、戦国を動かす〜  作者: 細川 雅堂
第四章 歴史の軋み

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第十八話 将軍の返書

京。

将軍の居城。


藤孝が歩み寄り、一通の書状を差し出した。


「信長公より文が」


義昭は受け取り、封を切った。


──四国討伐は、天下安寧のため。


信長が政治に手を伸ばした。


義昭は目を細めた。

そして……笑った。


藤孝が驚く。


「……将軍様?」


義昭は書状を指で押さえた。


「信長は、試している」


義昭は書状を机に置いた。


「信長は軍の人だ。だから速い」


藤孝が頷く。


「四国討伐を“天下安寧”と……朝廷、公家、寺社を意識した文にございます」


義昭は微笑んだ。


「将軍の戦場に、足を入れた」


藤孝は息を呑む。


「……信長公が、政治を……」


義昭は首を振った。


「違う。政治を“試した”だけだ」


義昭は静かに言葉を続けた。


「信長は速さで国を変える。だが、政治は速さでは動かぬ」


藤孝が深く頷く。


「構造……でございますな」


義昭は笑った。


「政治は、力だ」


藤孝の目が揺れた。義昭は書状を指で叩く。


「信長は、構造の力を測っている。ならば──返す」


藤孝が問う。


「どうされます」


義昭は即答した。


「返す」


藤孝が眉を寄せる。


「……返す?」


義昭は頷いた。


「政治で」


藤孝は息を呑む。


「信長公の政治を……逆に……?」


義昭は笑った。


「構造は、使う者の手で形を変える。信長が触れたなら──その手を掴む。離さぬ」


義昭は筆を取った。


「藤孝」


「はっ」


「朝廷へ文を出せ」


藤孝が姿勢を正す。義昭は静かに書き始めた。


「四国の戦は──天下を乱す恐れがある」


藤孝が息を呑む。義昭は笑った。


「裏返す」


藤孝は震える声で言った。


「……信長公の“天下安寧”を……」


義昭は頷く。


「信長の政治を、信長に返す」


藤孝は深く頭を下げた。


「……お見事にございます」


義昭は筆を置いた。


「信長は軍で国を動かす。ならば私は、政治で国を動かす」


義昭は京の空を見た。


「信長。面白い」


義昭は笑った。

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