戦闘団「ピンクパンター」
アフリカ軍団の補給についての苦闘の話
さんざん文句を着けるものの、パンター実用化以来こいつの整備に明け暮れてきた、我らが整備班長どのはアフリカ軍団中でも有名人になり、「飼育係」と渾名をもらうに至った。
何せ、その後のアフリカ軍団は「北アフリカ動物園」と補給担当が苦笑する位、様々な装甲車両やらが投入されているのだ。
「豹」「象」「虎」「サイ」「灰色熊」さらには「ディンゴ」や「グレイハウンド」やら米英軍の装甲車両まで入ってきたからだ。
それらをなけなしの補給物資や部品をフル活用し、戦力を維持する腕前はまさに「飼育係」他ならない。
当初、パンターの実用試験のために投入された実験大隊はその後も前述の各種車両を受領して、最終的には戦闘団「アフリカ」、通称「ピンクパンター」になったのである。
以前、ジブラルタルの英軍根拠地が健在な頃は、アフリカ軍団への補給は、滞りまくっていた。
ところがドイツ海軍の奇襲で後方支援に必要な施設や人材が被害を受けて以来、地中海をわたる補給船のほとんどが無事にトブルクなどの港に安全につくようになった。
さらに喫水の浅い揚陸艦艇が北アフリカの要地に必要に応じて補給物資をあげられるようになったのが、劇的な補給状態の改善に繋がったのだ。
かくして、戦闘団「ピンクパンター」はドイツアフリカ軍団の切り札の一つとして終戦まで、アフリカ戦線を走りまわるのである。
なお「ディンゴなど」については、入手された経緯が興味深い。
もともとアフリカ軍団は捕獲品を活用というか、追い剥ぎのようなやり方で貧弱な補給を補ってきた。
軍服も階級章やらの記章類を付け替えるだけで、イギリス軍の服を流用したり、後方支援のトラックなぞはドイツ製を探すのが難しいくらいである。
ひどいときは勝手に現地製造の「自走砲」も作りだす始末。
こんな苦しい台所事情を神様が察してか?
1944年のクリスマス、一隻のリバティ船が舵機の故障で沿岸に漂着した。
乗組員は爆薬を仕掛けて脱出していった。
しかし爆薬は不発であった。あわてたためか、時限発火装置を繋ぎ忘れたのだ。
かくして、リバティ船一隻まるまるの軍需物資がアフリカ軍団に「クリスマスプレゼント」として渡されたのである。
その中に含まれていたのが、「グレイハウンド」などの装甲車両である。
このような環境に入り込んだ我らが整備班長は、その職人気質をフル活用する機会を与えられ、極めて厳しい環境の中でも高い稼働率を維持して本国のメーカーの技術者を驚かせたのである。
後世のイギリスの歴史家は、アフリカ軍団にこの整備班長がいなければ、エジプトにドイツ軍が雪崩こむことはなかっただろうと悔しがる始末であった。
捕獲されたリバティ船には他の品物もつまれてます。後日、そちらも活用されるでしょう。




