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イギリス海軍の疫病神  作者: 通りすがりの野良猫
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原子爆弾開発は?

1945年も過ぎるとやはり、原子爆弾の開発情報は避けて通れない話です。

アメリカとイギリスの共同作業で開発中の、原子核の核分裂反応を兵器に利用する、いわゆる原子爆弾だが、第二次世界大戦では、なかなか実用化にはもっていけなかったのである。


後年の我々から見たら、プルトニウムを使ったガンバレル型原子爆弾は、うまくいかないのがわかるから(早期爆発と言うか、不完全な反応をおこしてしまう)こんなことに時間を費やすのは如何なものか?である。


しかし、当時は、Mk1リトルボーイ、Mk3フアットマンより、シンマンのほうにスタッフは皆、注目していたのである。

なんせMk1は高濃縮ウラン235が60キログラム近く使われている。

これだけのウランを濃縮する手間が大変だったのである。


ウランより少ない量で臨界になるプルトニウムを、簡単な構造のガンバレル型の核兵器にしてまう、というのが魅力的に思われたのである。

重量も、ウランを使う場合より七割くらいに収まる。


またインプロージョン型は、コアのプルトニウムを圧縮するための火薬の並べ方やらの計算が大変なこと、同時に点火させることなど面倒があった。


これらの理由で、シンマン、「痩せ男」が大事にされていたのである。


しかし、この男は食わせものであったのだ。

不安定なプルトニウムの同位体のおかげで、十分な数の原子核が反応を完了するまでに、早期爆発をおこしてしまうのが、開発がずいぶん進んだ1945年7月にようやくわかったのである。


実はこの頃、最初のシンマンの実弾が完成して、パールハーバーに移送され到着寸前であったのだ。


そして、マリアナ諸島の重要な日本軍の拠点であるサイパン爆撃を計画していたのである。


この作戦、マッターホルン作戦は、最新のBー29を片道攻撃に使い、乗員は潜水艦で回収、というドーリットル大佐も二の足を踏むような奇襲作戦を考えていたのである。


当時の米軍は(戦後かなりたってもだが)原子爆弾を単に「威力の大きな割にはコンパクトな、便利な武器」くらいの認識であった。

原子爆弾でサイパン島の防備をぶっ飛ばし、そこを作戦基地にして日本本土攻撃を空母機動部隊、Bー29、潜水艦による通商破壊と様々な技をあわせて、日本を降伏に追い込む腹であったのだ。


そこまで準備してたのに、「シンマンは信頼性が低く、不完全爆発しかねない」なんて機密電報がパールハーバーのヒッカム基地に展開していた第509混成群に届いたから、現場は唖然である。


この多少無理やりな作戦は、比較的軽量なシンマンを搭載する前提での作戦であったのだ。


重量が約1.5倍はあるMk1やMk3では到底無理だと判断されたのである。


シンマンを搭載前提に改造されていたBー29も改めて、改造が必要になり、本国に帰還することになったし、空力的にもずいぶん違う爆弾に合わせた投下方法も検証しなければならない、となったのである。


かくしてサイパン島に対する史上最初の原子爆弾投下は幻と消えたのである。


また、Mk1については、高濃縮ウランの生産の遅れ、Mk3は「爆縮レンズ」の設計、検証の遅れから、完成は対ソ戦末期となり、実戦使用はなくなったのである。


なお、この原子爆弾の情報はスパイによりソ連にも早い時期から持ち込まれ、開発がNKVDに主導されて進んだが、情報漏れをしって、偽物をつかまされたため、初のソ連の実験は失敗、せっかくの費用もパー。

激怒したスターリンによりNKVDの長官ベリヤの政治生命は断たれ、ついでに彼自身の命であがなうことになったのは既述の通りである。



やはり日本人の感覚からしたら架空戦記でも原子爆弾の使用は避けたいですね。

実弾(ウランを抜いたもの)のMk1や戦後のB57や、AIRー2とか博物館で見てきましたが、やはり怖かったですから。

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