寒い、疲れた!
急に動員されてくたくたになったのは、日本の第1航空艦隊だけではなく、アメリカ海軍の最新鋭空母「ミッドウェイ」まで引っ張りだしたのである。
「暑い太平洋が懐かしいなあ!」
「そうですね艦長。私は今までほとんど太平洋艦隊の中で転勤してましたもん。
こんな寒い港はやですね。」
「まあな、パナマ運河通ってハワイに行って、それからジャップと、にらみ合いのはずが、北海抜けてフィンランド湾だもんな。」
「スカパフローでもらった衣類、皆、耐寒被服ですもんね(>_<)」
ぼやきにぼやきを重ねるのは、アメリカの新型空母「ミッドウェイ」の艦長と副長である。
すでに多数の空母が配備されている太平洋ではにらみ合いが続いてるだけだが、なんと北大西洋の外れも外れ、フィンランド湾のさらに奥のサンクトペテルブルグに進出しろと命令されたのである。
任務は、搭載機による対地攻撃の提供である。
と言うのは、英米とドイツが休戦した流れで、日米の休戦が現実的になったことにある。
本来はアメリカ海軍は真珠湾攻撃で太平洋艦隊の戦艦を壊滅、さらにミッドウェイ海戦ではとうとう航空母艦までドック送りまたは撃沈の憂き目にあったのであり、復仇の気持ちに燃えているんだが、英米とソ連の対立はとうとう日米の「休戦」すら招きいれたのである。
これを引きずり出したのが、先に紹介したアメリカ第3軍からの提案である。
つまり、日米が対峙している太平洋から双方の空母の主力を「引き離し」て北海と、黒海にそれぞれ派遣して、対ソ戦に投入しようと言うのである。
アメリカ第3軍としたら、いくらでも欲しい対地支援を提供する空母の能力に目をつけたこと、基本的には自身で航空機の支援能力を持つ空母を投入してもらうことで、投入されている機体数が限界に近い(単なる収容能力より整備員などの支援能力から限界)前線の航空基地のカバーをしてもらうあたりにある。
また、作戦計画にはあえて書かれてない話もある。
大西洋方面であまり実績を残せてないアメリカ海軍に、「花を持たせる」効果を期待している。
早い話が海軍の顔をたてつつ、陸軍の支援にあたってもらいたいのである。
政治的には、日米の兵力引き離しで、偶発的な交戦の機会をなくし、休戦の機運を醸成するのも目的に含まれている。
黒海の場合は日本艦隊の来航までエセックス級が日本の母艦航空隊を支援するのも、決まったのである。
そのためCVB、つまり大型空母や日本の第1航空艦隊が互いに苦労するに至るのである。
どちらもくたくたに。




