「ちょび髭の伍長殿」はお休みです
我らが厄介な「総統閣下」に何が起きたか?
第二次大戦のドイツで欠かせないのが、第3帝国総統であろう。
しかし、最近そのリーダーシップは発揮されていない。
何故か?
彼は脳梗塞を患い、半死半生の状況であったのだ。
近年の医学なら、早期に血栓の溶解療法など行い、改善させられたのだが、いつものように自身の寝室にこもってからの発症であり、側近らが気づいた時にはもう手がつけれない。
党の中枢部が混乱する中、戦争中でもあり、国防軍が親衛隊の一部や財界、政界と結び事態を収集していたのである。
つまりドイツにとって英米との独ソ戦をめぐる休戦と連携は渡りに船の、絶好のタイミングであったのだ。
将軍や提督の多くが、英米との開戦にはそもそも賛成していなかったことからも、今回の休戦は大歓迎されたのである。
占領地からの撤退などあるにしても、特にアメリカの膨大な生産力に裏付けされた巨大な敵戦力に皆、恐怖していたから余計である。
さらにそもそもの敵、共産党率いるソ連を打倒するチャンスなんである。
この時に「思いつきで掻き回すちょび髭の伍長殿」はいないほうがやり易いのである。
この意見に、武装親衛隊まで乗っかる始末だから、「総統閣下は過労により療養中」であるほうが皆、丸く収まるのであった。
ただ、困ったのは後継者問題である。
伍長どのの専横で、皆が振り回された記憶から、どう考えても、後継の二代目に誰もが、あんな権力を与える気にはならないのである。
つまり誰がなろうと苦労するのは目に見えている。
そのため、政治権力の場では、珍しいケースだが互いに譲り合いの精神を発揮、言い方を変えれば、「誰もがババを引きたがらない」事態となった。
とは言え、誰かがババを引く分けで、政治的駆け引きの一番巧くなかったドイツ海軍のデーニッツ提督がババを引くことに相成ったのである
そして大統領と首相を兼務するような形になった「総統」を廃止して、あくまで「大統領」に就任した。
なんで海軍?というのもあるが、空軍は以前のゲーリングほど政治にたけた(戦略面はひどかった)者もおらず、では陸軍となるが、陸軍は陸軍で旧プロイセンの系統やら、再軍備以降取り立てられた将官やら様々な立場の有力者があり、誰がなっても揉める。
おかげでデーニッツ大統領は、休戦後の政治的折衝で振り回される羽目になるのであった。
かくして、デーニッツ大統領の苦労が始まるのである。




