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自らの人生に何かしらの不満があったり、不足感があった場合。果たしてそれはどうすれば満たすことが出来るのか。
答えは至極単純なものだ。その足りないもの、満たされないものが得られないならば、『別の何かで埋めてしまえばいい』。
例えば、女性関係が上手くいっていない場合の不満は信頼出来る仲間で埋めることが出来るだろう。
友人がいない人間の穴は、もしかしたら金が埋めてくれるかもしれない。
では、人生におけるそもそもの満足感が足りない場合。そしてなおかつそれに対しての『時間が足りない』時は。
これも簡単な話だ。『それ以上の快楽を見つければいい』。それら全ての不満が飛び散るような、そんな快楽。
人によってはそれは様々であり。しかし、それは大きな危険を伴うことも多い。
「…この感覚。この、手に残った感覚…」
彼の場合は、少々特殊であるかもしれない。
武家の当主の息子に生まれたにも関わらず、城からはほとんど出られず。
剣術を教えてもらっても、使いどころは見当たらず。
上の兄弟は親と戦場に出ることも多々あるのに。自分だけは、何もせずに座っていなければならない。
そんな生活の中で、襲いくる自らの身体の異変に彼は気付かないはずもなく。
『満たされない日々』を過ごしてきた彼の心中は穏やかではない。
「…若様!! いけません!! どうか、正気を保たれて…」
彼の狂った笑いと笑顔を見た男は、焦りと絶望感に満ちた顔で彼の制止を促す。
「正気? 俺は正気だよ。それより、こんな気持ちいいことが世の中にあったなんてな…」
正気を疑われた彼は、自らをまともだという。そして、数秒前に見つけた『心を満たす快楽』に身も心も飲み込まれる寸前であった。
刀を見つめる目は子供のように純粋無垢で。身体に付着した血に触れる姿は無邪気な子供のようで。
「…なりません。…貴方はそちらに行ってはいけない…ッ!!」
「…なぁ。ならどうして俺はこんなに幸せなんだ…? お前が言うように『こっち』に来ちゃいけないならさぁ…。今までの何倍も最高の高揚感があるんだぞ…?」
「若様…。もし、こちらに戻ってこないようであるならば…容赦なく殺します」
そう言って男は刀を構える。それを見た彼は、一瞬呆気に取られたような顔になり…そしてまた不気味な笑みを浮かべた。
「…お前らがどうして俺に『これ』をさせなかったのか…。理由、分かったよ。こうなることを防ぐため…か。俺が『この行為に染まらないように』。」
その不気味な笑みは、男の背筋を凍らせた。それほどまでに憎悪と快楽に満ちた笑み。
男が構えたのと同じように、彼も手に持った刀を構える。それはそれは、さも楽しげに。
「…お前はどんな音がするのかな、光秀…」
好奇心と呼ぶにはあまりに汚れている殺意を…彼は目の前の腹心の従者へと向けた。




