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「…?? なんか、城の方が騒がしくないか…?」
団子屋から出て暫く歩いていると、信蔵があることに気付く。
何やら人の様子が慌ただしい。城に近くなればなるほどその喧騒は増していっている。
「!! あれは…!?」
信蔵の発言の後に男は別のあることに気付いた。
黒い、何かが城から立ち上っている。それはゆらゆら揺れながら、何かを伝えるように。
そして嗅覚を擽るのは少しばかりの、何かが焦げるような、そんな臭い。
「敵襲か!? 急いで戻るぞ!!」
少し遅れて信蔵も状況を把握し、城へ向かい走り出す。
「の、信蔵様!? お待ちください!!」
男もそれに続くように走り出す。その焦ったような面持ちが事態の深刻さを物語っているようだった。
城へと近付くにつれて、今度は声も聞こえてくる。焦げ臭さは更に増していく。
「なんだって、こんな急に…」
奇襲をされる、ということは滅多にない。何故なら、戦争をする場合は宣戦布告をするのが道理であるからだ。
そして昨日まで何もなかった。他の国との会合も、他の武将との揉め事も何もなかったはずなのに。
しかし、現に城では騒乱が起きている。些細な騒動の雰囲気ではない。明らかに何かと争っている音と臭いだ。
「…謀叛、ですかね」
「…そりゃ、有り得るな。むしろそれしかねぇ」
そこから導き出される結論は、内部からの反乱。つまり、ここの当主への謀叛だ。
「…信蔵様、そうであるならば戻るのは危険です」
「…だからといって黙って指くわえて見てる訳にもいかないだろ。怖いなら俺は一人でもいくぞ」
そう言って更に走る速度を上げる信蔵。それを見て更に焦りを募らせるような顔をした男もそれに続く。
城門へあと少しで辿り着く、といったところで二人の目が捉えたのは門の前に立っている三人ほどの男だった。
全員が血が付着した刀を手に持ち、周りにはその男達に斬られたであろう人が転がっている。
その三人は当然信蔵と男のことを知っている。でなければこんなところで出待ちなどしていない。
「…邪魔だ、お前ら。道を開けろ」
「大変申し訳ないのですが…承服出来ません、信蔵様」
物腰は丁寧だが、格好がそれに見合っていない。刀の切っ先を全員が信蔵へと向けている。
「後悔するなよ、お前達」
それを見た信蔵は地面に投げ出されていた刀を手に取り、構えようとした。
「…あれ?」
刀を手にして、構えようとした時には三人の姿が消えていた。
いや、消えてはいない。三人はただ地面に倒れもがいているだけだ。
「なに、が、…?」
状況を飲み込めてないのは信蔵だけではない。むしろ一番分かっていないのは三人の方だろう。
ふと横を見るとさっきまでそこにいた人物がいなくなっている。
その人物は何故か、目の前にいてこちらへ向かって歩いてきている。
「…信蔵様に殺させる訳にはいきませんよ」
目の前に立っている男は、返り血を浴びて真っ赤になった着物を着ている。手には血に染まった刀が。
「お、おま、今の…」
それを見て信蔵は唐突に理解する。今の一瞬で、この男は三人の男を斬り捨てたのだろう。
「手、震えてますよ」
そして自分の刀を持つ手が震えていることにも気付く。当然の話だ。これは、人を殺す道具なのだから。
「…行くのであれば、私が守ります」
その言葉に、信蔵は無言で頷くことしか出来なかった。




