陽は何者?
城に近付くにつれて店や家が少なくなっていき、人通りが段々減っていく。
それと相反するかのように緊張感が増していく。
その雰囲気を感じ取ったのか、夏生の俺の腕を組む力が強くなっている。
…大丈夫だ。俺がいるぞ。
と目だけで訴える。声に出さなくても夏生にはきっと伝わったはずだ。
それに反応するように腕を組む力が少し弱まる。だけど、まだ不安感は拭えていない。
その原因は周りにいる人々の目線だろう。全くどうしてそう威圧感を出すのか。
ま、それもそうか。
「…何だ、あの男は…?」
「何故ここに幼子を連れた男が…」
そろそろ城に着くというのに、幼女を連れた男が悠々と歩いているのだからそりゃ不自然に思うわな…。
しかし、どうしてこの男達は明らかに異彩を放っている俺達を追い出さないでただみているだけなのか。
その理由は後で分かることだろう。
「…だが、あの幼子は美しいな…」
「あぁ、なかなか見れるものではないぞ…」
うん、この感じ一体何回目だろうね。
小声で喋ってるけど、全部聞こえてるからね?
「陽…顔、怖いよ…?」
「えっ、あぁ…すまん。ちょっと殺意が顔に出ちゃったみたいだわ」
知らない内に顔に出ていたようだ。うちの娘に色目使ってるからちょっと殺意が沸いちゃっただけなんだよ。
うーむ、そろそろいてもいいと思うんだけどな…。
などと考えていると、前の方から慌ただしく数人の男がやって来る。
俺達の方を見ながら来ているので、俺達に用があるのだろう。
先頭の男は、他の数人と違い少々豪華な羽織を召していた。
慌ただしい中、一人だけ冷静にこちらを見て不穏な笑みを浮かべているその男は世間的にも有名な人物だった。
そして俺はそいつに向けて不機嫌さを隠そうともせず、言葉を発した。
「…随分久しぶりだな、藤吉郎」
その場にいた俺と夏生と目の前の一人の男以外の全員が驚愕の表情を浮かべる。
尚も俺の目の前の男は表情を崩さず、俺達をじっと見据えていた。




