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「…ふぅ、気が済んだ…。ったく、俺だけならまだしも夏生にまで手を出しやがってよぉ…」
精神衛生上よろしくないとの理由で、私はずっと後ろを向いていた。
どんなことをしたのかは知らないが、壮絶な悲鳴が聞こえたので多分相当鬼畜なものだったのだろう…。
やっと終わったようで、陽の方を見ると私はひどく安心した。
自分が生きていたこと、陽が死ななかったこと。
そしていつも通りの彼の姿が見れたからだ。
きっと、さっきのあれが彼の本来の姿なんだと思う。
殺しに貪欲で、残虐で、なおかつ狂喜染みてる。
あれが本当の『人斬りシンゾウ』なのだ。
「…悪かった。夏生まで危ない目に遭わせて…」
陽と目が合うと、彼はすぐに頭を下げた。
それはさっきの姿とはまるで正反対で、とても弱々しかった。
「…陽は、私が死んでもよかった…?」
だからちょっと意地悪してみる。聞くまでもない質問だ。
「うっ…。もう二度とあんな無茶はしないし、危ない目にも遭わせないです…はい」
「…じゃあ、陽は…私のこと大事?」
「…あぁ。誰よりも大事だ」
自然と口角がつり上がる。顔がどうしても赤くなってしまう。
「…クスッ。…なら、許してあげる…」
さっきまでとの対比がとても面白くてつい笑ってしまう。
鬼のようだった彼が今では普通のただの人間のように見える。
さっき、あれが彼の本来の姿なんだと言ったけど。
きっとこの陽も本物なのだと思う。
私の大好きな陽。いつだって私を助けてくれる、大好きな殺人鬼。
「…じゃ、行くとするか。ここにはもう用は無いし」
悲鳴を聞き付けた村人が続々と集まってきているし、早く帰るのが得策だろう。
いつも通り陽が差し伸べた手を、いつもより少し強く握りしめる。
「…うん…!!」
今日は陽も疲れてるだろうから、ちゃんと寝かしてあげよう。
私が代わりに起きててあげるんだ。そんな考えが頭の中を駆け巡っていた。




