殺人の救世主?
※勘太郎視点
朝になってしまった。結局、あいつらは早々に夜の世界へと消えていってしまった。
あいつが殺人鬼だった、ということは村の人達には伝えていない。
今、村は突然消えてしまったあいつらの話題で持ちきりだ。
村の外に転がっていた死体の山も相まって、今日は村が一段と騒がしい。
「なんだ、あの嬢ちゃん達帰ったのか。残念だな」
「…俺の黒き天使…。また会えることを信じているよ…」
「夏生たん…」
…まぁ、一部の人間はあいつのことより夏生のことが気になってるみたいだけど。
あいつに最後伝えられたこと。それの意味はもう分かってる。
夏生は何一つ間違ってなかった。あれは着いて行くに値する人間だ。
…それでも、人を殺すことを容認する気には俺はなれないけど。
「不思議な人達だったなぁ。なぁ、勘太郎」
「爺ちゃん…。…あぁ、そうだな」
知らない方が幸せなことは多い。
あいつが殺人鬼であったことは生涯秘密にしておくつもりだ。
不本意だが、あいつにこの村を救われたのは事実なのだから。
「む? 何やら勘太郎、嬉しそうじゃな。何かあったのか?」
「…別になーんにもっ!」
「????」
何にしたって、この村があるのはあいつのお陰なんだ。それは間違いない。
それがあいつからの贈り物であるならありがたく受け取っておこう。
人殺しで、冷たくて、でも俺に大切なことを教えてくれた。
きっと、あいつが来なかったら色々なことが変わっていたんだろうな。
もう、憎むことは止めようとそう思えたのはあいつのお陰だ。
もう、あんなことは起こさせないと思えたのも同じだ。
…あぁ、何でだろうな。あいつはただの冷酷非道な殺人鬼なのに。
『殺人』で人を救ったあいつが。
俺には救世主に見えたのは何故だろう?
…考えても無駄か。
『殺人の救世主』なんておかしな話、あるわけないだろ、と俺は頭を振った。




