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殺人の救世主  作者: おじさん
とある殺人鬼と少女の話
29/102

1-28

「こんな時代だ。別に珍しくもないだろ」


帰る場所の無い人間なんてきっと沢山いるはずだ。


理由は様々だが、根本はこの『時代』にあると言ってもいい。


ある人物が、この国の権力を握り始めてから。天下統一を果たしてから。


『平和』なんて言葉は嘘みたいに消えてしまった。


戦乱が繰り返され、暴力略奪は当たり前。


毎日のように人間が死んでいく。


…そんな時代だ。


「……俺は憎いよ。俺の父さん母さんを奪った全てが憎い…!!」


憎しみ。それは負の感情だ。


負の感情は人を狂わす。例外無しにだ。


憎しみに囚われたものの末路は大体決まってる。


勿論、いい方向に行くわけがない。


「…憎むのは勝手だが、それじゃ何も変わらない。お前が壊れるだけだ」


「!! ならどうすりゃいいんだよ!!? 憎むことしか、出来ないじゃないか…」


「本当にそうか?」


俺の発言に、勘太郎は俯いてた顔を上げる。


憎むことしか出来ない?…それは可笑しな話だ。


本当に憎いなら…『俺みたいになってる』はすだ。


「分からないか? お前の世界には両親しかいなかったのか? …違うだろ」


さっきも言ってたじゃないか、自分で。


「村の皆に恐怖を与えるな」って。


もう気づいてる。気づいてるはすだ。


自分が、これから何をするべきなのか。


「…お前には帰る場所があるじゃないか。大切な人達が沢山いる。…間違っても復讐だなんて愚かな真似はするな」


俺みたいな哀れな人間にはなるな、と付け足したかったのを何とか堪える。


どうも最近はお人好しになってしまってるようだ。俺がこんな発言するなんてな。


だが、勘太郎の顔を見る限りはちゃんと伝わっているようだった。


「やっぱり、陽は、優しい…ね」


「…気まぐれだ。優しいって訳じゃない」


ただ、俺みたいな人間が増えるのが嫌だっただけ。


ただそれだけだった。

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