山村殺人事件ーend
「巴さん、大丈夫ですか」
泣き崩れる巴にかける言葉として合っているか分からない。
だけど小さい背中を無視することはできなかった。
返答は。
「私も自首いたします……罪を償わねば」
「首謀者は日笠さんです、あなたはただ巻き込まれただけ」
「でも……私のせいで……」
「もう自分を咎めるのはやめた方が良いですよ」
「でも!!」
「これ以上自分の罪を増やしたくないなら、選択を誤るな」
その場で出た薄い言葉。
それが巴にどれだけ影響したかは知らないが罪を無闇に償うのは本当の贖罪にはならない。
正しく受け止めないと誰も望まない罪滅ぼしになるから。
「優しいね、横溝くん」
「いや、ただ昔の自分を見ているようで辛かっただけだよ」
「おめでとう名探偵」
暗き森のなか、落ち葉や風が静止し世界が止まった。
原因は目の前に浮遊する見覚えのある梟。
「これで終わりなのか?」
「あぁ、君は事件の真相に辿り着き迷宮を攻略した。約束は果たすよ」
梟の言葉と共に事件に映る俺たちを囲む時計の模様。
針が動くたびに荒城がジャンプするが針は実体化していないので意味はない。
周囲が白む中、もう少しこの時代の人と話したかったかなと一抹の寂しさを覚え俺たちは元いた現代に戻る。
「戻ってきたんだね」
夕暮れの公園の中、荒城は空を見上げて笑う。
奇怪な事すぎていまだに夢だったんじゃないかと疑わしいが周囲を見るにとりあえずは戻ってくれたらしい。
梟の話じゃ俺たちが旅立ってから10分ほどしか経っていないらしい。
「横溝くん、今回はありがとうね。多分一人だったらパニックで推理にもならなかったよ」
「それはお互い様だ。ありがとうな」
巻き込んでしまった罪悪感もあるが今は旅路の疲れを取るのが先決だと思い必要最低限の言葉を交わしそれぞれの家路につく。
なんともぶっ飛んだ経験を……もう2度と起こりたくはない。
30分ほど歩くと自宅のアパートが見える。
階段を登り右に2部屋すぎた扉が俺たちの家。
「ただいま、電気つけていいって言ったろ。みさき」
部屋は狭く玄関の隣に台所がありその前にテーブル一個、半開きのガラス戸の向こうに寝室兼リビングがある。
その電気がついていないリビングに座る腰までのびた黒髪の少女がこちらを向く。
「あぁ、にぃ……おかえり。お母さんとお父さんがじゃがいも作ってくれたよ」
笑うみさきの手にはわたが飛び出た原型がないクッション。
「そうか良かったな、もう少しで夜ご飯出来るからな」
「えぇ……せっかくお父さんとママがじゃがいも作ってくれたんだからこれ食べようよ。にぃは料理作れないじゃん」
冷蔵庫を開ける俺を引っ張るみさき。
「お母さんに頼まれたんだよ、今日も帰れないから作っておいてって」
「むぅ……お母さん言うなら仕方ないなぁ」
夕食を軽く作り腹が満たされたところでみさきは就寝。
俺は皿を洗い買ってきたみたらし団子を齧りながら部屋の奥にある鍵がかかった扉を開錠する。
「母さん父さん……今日変なことあってさ。まとめられないけど、少し楽しかったよ。おやすみ」
俺は手を合わせ、今日も母さんと父さんに近況を報告する。




