初日13:45:09/日向町立病院/北原直人
銃声が響いた直後、派手な爆発音が鳴り響き、病院内の明かりが一瞬で消える。
あと少しでたどり着く入り口付近で炎が上がっているのを見ると、舌打ちしながら方向転換した。
元来た道を戻っても、奴らは追いかけてくる。
だから、1階の適当な病室から窓を開けて外に出た。
病院の敷地を抜けて、適当な民家の庭に息をひそめる。
病院の方からは、蠢く声が聞こえてきた。
鉄パイプを持った手を震わせながら、俺は周囲に誰もいないことを確認して民家の軒先に座り込んだ。
息を整えて、暫く黙っている間に辺りは静寂に包まれる。
「誰だあの銃声は」
そう呟いて立ち上がると、民家を出て、霧が深い町を歩き出した。
ここも長くは居られない。
俺は、一歩足を進めるのも恐る恐るといった感じで、ゆっくりと歩く。
何処へ行こうか・・・
考えつく行動は3つ。
もう一度図書館へと戻って、いいところで邪魔された読書の続きをするか・・・
病院にあった平元とかいう子が生きているのを信じて、彼を探し出すか・・・
未だ行方知らずの同僚達を探し出すか・・・
今、図書館に戻れば・・・もれなく奴らと血みどろの争いを繰り広げることになる。
だったら・・・一度この町の入り口まで戻って・・・そこから・・・同僚と平元という子を探し出すのがベストか?
俺は、そう考えながら・・・町の入り口の方へと戻る橋まで来ていた。
街灯を嫌って、あえて暗闇を選んで歩き・・・橋の丁度真ん中で柵にもたれかかる。
橋を渡ると商店街に突き当たる。
その近く・・・少し港の方へと行くと・・・駐在所だ。
あの銃を持った元駐在警官の成れの果てが、また襲ってくるかもしれない。
もしかすると・・・もっと厄介なのがいるかもしれない。
ネガティブなことばかり頭に浮かんでくる。
そんなことが浮かんでくるせいで、動けない。
一歩が踏み出せない。
「・・・・・!」
そうやって、橋のど真ん中で立ちすくんでいると、再び銃声が響き渡った。
さっき図書館で聞いた音よりも、もっと派手な音。
それがもう一発響き渡る。
その銃声は、明らかに橋の奥から鳴り響いていた。