あぁーれぇぇっ?! 回転、回転、大旋回
シリアスの次はコメディだよなぁ!
「……お姉さん、お姉さん。そろそろ……」
か細く、今にも消え去りそうな声に意識が覚醒する。
「……うん、ごめんねユラちゃん」
名残惜しく感じながら、手を解こうとすると何故か解けない。
(う〜ん? 何で、どうして?)
まるで、自分の手が独立したかのようにユラちゃんをがっちりホールドしている。
「昨夜はお楽しみでしたね」
ユラちゃん側の毛布からすっとルルレアが飛び出してきた。
「えっ? お楽しみって、何が?」
「良いんだよ、クララちゃん。ふふっ、でもぉ……私は悪代官だからぁ。少し悪戯したくなっちゃった」
ルルレアが私の手を握ると、手は自然に動き、体までも操られて直立の体勢になった。
「よし、じゃあ始めようか。ちらっと見た知識で知った座敷遊びを…………」
指を弄ぶように動かしながら、ルルレアは一歩、まな一歩と近づいてくる。
「ちょ、何?! 何するの?!?!」
目をピキーンと輝かせて、ゆっくり、着実に近づいてくる。
「話せば、話せば分かるからっ! だから、ちょっと待ってぇ……」
後退りしたいのに、下がれない。逃げ場のない恐怖に涙だけがつぅーと跡を引いている。
「さぁ、どうしようかなぁ?」
「うっ、うぅ……」
瞼を閉じようとしても、その光景を見せる為だけにピクリとも動かない。
「まずは、そぉーれ!!」
「ひゃぁぁぁぁっ?!?!」
寝衣を結ぶ紐を掴まれ、そして勢いを付けて引っ張られた。必然的に回転運動が起こり、コマのようにクルクル回る。
「次はぁ、…………」
「まだあるのっ?!?!」
はだけた寝衣を抑えることが出来ず、覆いかぶさろうとするルルレアの髪が頬にかかる。
もう、何が何なのか分からず、なされるがまま弄ばれようとする事態に私は叫ぶことしか出来なかった。
*
「平和でござるなぁ」
乙女の悲鳴も、もはや慣れたこととして扱えるのを何とも言えない気持ちで呟く。
ちらりとメモを見て、また閉じる。
(…………手がかりになるようなものが乗ってると思えない。それに、…………行って何をするのだろう)
絶とうと思っても、完全に断ち切れない自分がいることに腹が立つ。
(区切りが必要かもしれない、彼女たちが去っても同じような日々になるとも限らないから)
少しの日々を共有しただけで、彼女たちはすぐに馴染んだと思う。
羨ましい、と言うのが本音だ。いるだけで、居場所を明るくすると言うのは天性の才能だろう。
拙者にはそんなこと出来ないから。
彼女たちの起こした嵐もまた、苛烈と言えるだろう。明らかに彼女たちを狙う刺客まで派遣するなんて、大事以外の何者でもない。
まあ実際のところ少し小突いて、さっさと帰れと暗に伝えてるのだろうが。
(逆に言えば、機会は僅かしかない。相手が動揺しているうちに、情報を得るしかない)
きっと、ここで何もしなかったら後悔するのだろう。
もし調べて気になるものがなければ、いつも通りの生活に戻れる。
心の中で願い、メモを懐に仕舞い直した。
???「……すぅ……す……」
(ルルレア様。いくら楽しいからと言って、それ以上はぁ……)
お座敷遊びを書こうとしても、かける位置がこれ以降なかった。




