光の魔法使いクララ・パドヴァールの放浪記 束縛の腕
腕といえば、カイナと呼ぶか、ウデと呼ぶか。
あまり使わない読み方って、個性的だよね。
「お姉さん、お姉さん。起きて」
その言葉とともに私は目が覚める。懐にはユラちゃんがこちらを見つめ、私を揺らしていた。
どうも体が重い。これが金縛りという妖術だろうか? 不自由な状況は一先ず置いといて、
「どうしたの? まだ日は上がってないけど」
視線を外に移せば闇に包まれた外の様子が窺える。
「もう四時だから、お父ちゃんが仕事に行っちゃうの。お兄ちゃんも一緒に出ちゃうから、早く準備しないと」
まだ四時の間違いなのでは? そう思ったが、ユラちゃんは既にやる気なようだ。
「…………そうしたいんだけど、体が自由に動かせないの。全身が縛られたような…………」
そこで気付いた、ルルレアの姿が見えないのだ。確か私の隣で横になっていたはずなのだが、唯一動かせる目を動かしてもルルレアの様子が見当たらない。
「もう一人のお姉さんなら、お姉さんの後ろで寝てるよ」
「…………っう、ルルレア起きなさいっ!」
私が叫ぶともぞもぞと背後が動く。
「…………クララちゃんはぁ……渡さない……よぅ」
ぎゅぅと体が締め付けられる。何故起きた時に気づかなかったのか。
「ちょっ、ルルレア? 起きてるのよね? 起きて! く、苦しいっ」
少しずつ体が動くようになり、何とか私を締め上げる手を叩く。
「クララちゃんが悪いんだよ? 私を放って置いて…………そんな女と、私だって…………」
耳元で命令するように囁くルルレア。締め付ける腕は徐々に強くなっている。
「くっ、ルルレア! 髪触ってもいいから、ね? 今日は長く触っても良いから、やめて?」
もう私の筋力では対抗できないほどに力が強くなり、必死で交渉材料を探す。
「今なら、ずっと…………」
「力を反発する堅固な円陣 【レジスト】!」
腕力で対抗し切れないと悟り、時間稼ぎの為に締め上げる力に反発する魔法を自分にかける。
「ほら、早く起きて! 今日は街を見て回ろうよ、昨日の服で、良いと思うんだけど?」
結構派手な衣装だったので、かなり場違いな雰囲気を醸し出すかもしれないが、今は構ってられない。
「……どうせ、他の女も連れてくるでしょ」
「いや、今日も二人だよ! ほら、案内は明日してもらえるように今日は自由に回ろう!!」
恋愛小説はあまり読んだことないので分からないが、さっきからそれに近い台詞が散見している。もしかして、わざと私を困らせてるのだろうか?
思えば、この屋敷ではルルレアより好奇心を優先してたかもしれない。
「ルルレア、今日は一緒にいるから、隣にいるから。そろそろ起き上がろう」
肩から垂れたルルレアの手を握り、重ねる。
「…………クララちゃん、幾らなんでもデラックスギャラクシアパフェはないよ。しかも、多すぎるからって周りの人をぉ…………」
ルルレアの手は緩んだが、私は彼女の手を強くつねった。
???「〜〜♪〜♫〜」
乙姫「珍しいわね、あんたが台所に立つなんて」
???「何故か、甘いものを食べたくなりまして」
乙姫「その為にわざわざ魔法陣を起動するなんて……」
???「でも、ルルレア様といる時は結構此処では起動してましたよ?」
乙姫「脱走癖はあんたが培ったんじゃ……」
???「そう言っても、ルルレア様はあまり遠くまで行きませんでしたし、私が影から見守ってたので」




