溢れ出す無数の気泡、幽玄なる新世界へ
いつも通りの題名よりこちらの方がしっくりきました。
ふわふわと暖かで、明るい世界。手を絡めるのは、柔らかで滑らかな絹。それは光を反射して、きらきらと輝く。
一撫で、二撫でと癖になってしまう触り心地。離さないようにと、強く握ろうとすれば、風に揺蕩って零れ落ちる。
名残惜しげに見れば、また手元に戻って其処にあることを教えてくれる。
離したくないと願う、離さないと手を伸ばす。
私はあなたと………………
*****
「いい加減起きてくれない?」
「…………んぅ、どうしたのぉ?」
声が聞こえて、瞼を薄く開くとクララが目を少し吊り上げて、私の瞳を見つめていた。
「どうしたって、いつまでこうしてるのかとこっちが訊きたいわ」
頭の回転が追いつかず、首を傾げると、私の手が陽の光を浴びて銀に輝く髪を掴んでいた。
「…………も、もうちょっとぉ」
そう言って、名残惜しそうに手を伸ばすがクララちゃんは私の手を掻い潜りそのままベッドから起き上がってしまった。
「今日は出発なのよ? 寝惚けてないで、ちゃんと起きなさい」
呆れた目でクララは私を見ている。私はクララちゃんの髪を見ている。ついでに手を伸ばす。
「…………触りたいの?」
激しく頷く。ぶんぶんと、勢いに身を任せて。
「だーめ。それでもう目は覚めたでしょ」
むぅ、クララちゃんの意地悪。もう一撫でくらいさせても良いじゃない、減るものじゃないんだし。
「魔法使いが、口づけでしか起こせない魔法をかけたから無理かな」
ごろん、と無気力に寝転がる。
「そんな魔法ある訳ない」
「ユーモアがないなぁ。でも、クララは私に既に魔法をかけられてるから」
ため息をついて、一言。
「…………髪を撫でても良いから、早く起きて」
「はぁーい」
約束を取り付けたぞ、心の中でガッツポーズをしつつ、
「成る程、ルルレア様は美しい髪がお好きと。レイリア様に髪の艶が良くなる何かを取り寄せてもらおう」
着替え始めたクララは気づかない、ひっそりと聞こえた小声を無視した。
*****
私の部屋から出て、既にロビーに降りていたクララを見ると、竜宮城の奥の方を見ていた。
「この先、何かある?」
「え? 別に何もないよ」
小さい頃に隅々まで探検したから、何もないはずだと思うけど。
「何か気になるの?」
そう言うと、彼女は少し考えた後、
「奥に何かあるような…………勘だけど」
彼女の指はまるでその形を舐めとるかのように撫でて、首を傾げていた。
「…………違和感を感じるのは、何だろう」
彼女の言ってることを十分の一も理解できなかった私は…………先程の約束通り髪を触っていた。
*****
「ルルレア様ぁ、ルルレア様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ごめんね、こいつが煩くて」
見送りにはお母様とリコリコが来ていた。リコリコはこちらに手を伸ばしながら、滂沱の涙を流している。…………涙が尽きたら、血の涙も枯らすまで流しそうだ。
「いえ、この程度なら気になりません。それに、リコリコさんには貴重な経験させてもらったので」
「良いんだよ、こいつはしょうもない理由で戦っただけだろうし」
クララとお母様は互いに苦笑しながら、握手をした。
「リコリコ、途中で水差してごめんね」
「良いのです、戦場では対処できなかった自身が悪いですので」
ほんの少しの自己満足でしかないけど、リコリコは笑って許してくれた。私もそれにつられて笑う。
「…………それはそれと、この泥棒猫!」
「はっ?! 猫? 何で?」
泥棒猫の意味を理解してなかったクララはリコリコに質問してしまう。
「ルルレア様を暫し、ほんの暫しですよ! 頼みますね」
そう言って、頭を下げた。
「分かったわ」
力強く頷くクララ。
「じゃあ、これ以上湿っぽくならないうちに行っといで」
お母様は私とクララの背中を押す。
「クララちゃんには水中の活動時間を伸ばす道具を渡したから、多少は海底でもゆっくり出来るよ」
その言葉を胸にしまい、私たちは外に踏み出す。
私は一歩進み、振り返って、
「行ってきます!」
「お世話になりました!」
私たちは手を振る、心細さと手に伝わる暖かさを感じながら。
前を向くと、幻想的な光景が広がっていた。
私を大きく超える巨大魚。変な形をした岩場、それを照らす光る苔や魚。
私はすぐに上へ登ってしまったから、こんなに近くにこんな光景があるだなんて想像もしなかった。
ついつい、と彼女が私の腕を引っ張る。すぐにこの場で話し合うことができないのが恨めしい。
『○○○○○』
私の口から言葉が漏れて、気泡に混ざって上へ上へと昇っていった。
えー、現在の雷帝は爆睡中。もしくは二日酔いでグロッキー
クララのもらった道具は活動時間は伸ばすけど、会話は出来ません。五文字は結構入る文字がある気がしますね。
最初に降りた洞窟みたいのは裏口みたいな感じで、一応下調べはしていると思うルルレア、あまり外に出たことないなかで上手く調べたのでしょう。今回は正面から出ていった感じだと思ってくれれば、助かります。
また長い補足だ、いつかこれをもっと短くしたいです。




