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ユルの変化

「お、お前、何のつもりだ!」


 狼狽したユルが体を硬直させる。正直に話すと怒られそうだから、このピンチを乗り切るための詭弁を探そう。


 私は目を閉じ、優しいお嬢様が言いそうな文言を、頭の中にある用語集から引っ張り出した。


「えーと。僭越ながら、あなたへの抱擁を、お母さまの代わりにさせていただけますか? せめて、今だけでも、嫌なことはお忘れください」


 主に、私のしでかしたことを記憶から消して!


 その時、ヒュッと空気が動くのを感じた。目を開けると、二人の闇がするすると交わり合い、ものすごい勢いで霧散していく。それに伴って、下から吹き上げるような風が生まれ、服や髪を揺らす。


 すごい。


 禍を転じて福となすとは、こんな感じだろうか。理由は分からないが、昇華するスピードが速い。解呪が進んでいくうちに体調が良くなり、心も晴れやかになるのを感じた。 


 頭がふわふわする。


 どれだけ負荷がかかっていたのか、今なら分かる。若くて体力のある私でもキツイのだから、中年のユルには負担が大きかっただろう。気の毒にと、心から同情する。


「こんな重荷を背負って、あなたは生きていたのですか」


 ため息とともに、本音がこぼれ落ちた。


「……分かるのか?」


「はい。同じような呪いをかけられていたそうですよ、私たち。ふふふ、おかしな仲間ですね」


「はは、俺以外にもいたのか。だが、……っ!」


「ユルさん?」


 様子がおかしい。

 呪いを解いたら終わりではないのか。


「ぐっ! あっ!」 


 ユルが悶えた拍子にバランスを崩して、私たちは頭から床に倒れ込む。咄嗟に受け身が取れない私は、衝撃が来るのを覚悟したが、ぶつかる直前で、ラウル様とクロードが受け止めてくれた。


「そいつと離れられるか?」


「……無理です」


 ラウル様に逆らうわけではないが、ユルにしっかり抱きつかれているため、自力で脱出するのは難しい。彼は、かなり痛みがあるようで、尋常ではない苦しみ方をしていて、見るのも哀れだ。


「かっ、体がっ! 骨がっ、砕けるっ!」


「呪いの副作用? それとも、解呪された場合の罠が仕掛けられていた?」


 レオンが顔を青くして分析し、クロードもユルが心配でたまらない様子だ。


「ユル様の呪いは消えたのか?」


「ええ、問題のないレベルです。なぜ苦痛に襲われるのか、僕には分かりません」


「こいつの手を外す」


「……ダメだ」


 えっ、誰!?


 荒い息とともに耳元で聞こえたそれは、ユルの声ではなかった。驚く間も無く、再び彼が苦しみ出す。


「くっ! うああああ!」


 見るに見かねたラウル様は、私からユルを剥がそうとして、なぜか、その手を止めた。


「体が変化している、のか?」

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― 新着の感想 ―
[一言] レオンで良いだろレオンで 手酷く扱っておきながら実は好きだったとか恥ずかしくてとかほざく奴は屑だろ お前がそう思うのは勝手だがなんで相手がその被害を甘んじて受けなきゃならないんだとしか思えん…
2021/10/11 05:56 退会済み
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