大会の説明をしよう(レオン視点)
食事が終わり、アリスが表情を変えた。
「そういえば、食べるのに夢中で、話を聞いていなかったわ」
ようやく思い出したのか。
このまま、明日へ持ち越しになるかと、ヒヤヒヤしたよ。
「安心して。とても聞いてもらえそうになかったから、話していないよ」
「そうなの?」
アリスは、自分の行いを振り返っているようだ。「そんなに、がっついていたかしら。一応は貴族の端くれなのだから、はしたない行動は控えなくては」と反省しているってところかな。
「僕に気を許してくれている証として、誇りに思うよ」
「そんなに酷かったの!?」
驚くアリスが可愛いくて、腹を抱えて笑ってしまう。本人は憮然としているが、マナーには全く問題ない。欲を言えば、雰囲気に甘さが欲しかったくらいだ。
「ここは、堅苦しい店じゃないから大丈夫だよ。ほら、貴族と平民が入り混じっているだろう?」
僕に言われて、ようやく周りを見た後、納得したようだ。街歩きの時にはキョロキョロするのに、自分の興味のないことには全く関心を持たないのは、どうかと思うよ。
「見えていなかったのか、さすがだね」
「人の心を読むのは、止めてもらっていいかな!?」
的確に言い当てたようで、アリスの反応が愉快だ。僕は、笑いを堪えながら、仕切り直すことにした。
「さて、ギルツ家の秘密の一つである、婿選び大会の説明をしよう」
「お婿さん? 誰の? なんで大会?」
はてなマークが飛び交うが、彼女の反応はもっともだ。ネーミングセンスを疑いたくなる大会名も、下手に歴史があるから変更が難しいと聞いた。
「……村おこしかな? 田舎のイベント的な?」
アリスの考えが、どんどんおかしくなって行く。しばらく放置したら、どんな結論に辿り着くのか興味があるが、時間が限られているので、打ち切らせてもらう。
「まあ、そうなるよね。僕も、初めは冗談かと思ったから。信じられないのも無理はないけど、これは、国王主催の全国大会だよ」
「ん?」
「全国から参加者が集められ、知力、体力、戦闘能力、コミニュケーション能力、性格、マナー、持病の有無、将来性、二人の相性などを総合的に評価する」
「へえ」
ダメだ。
アリスの心に少しも響かない。
もう少しだけ、頑張って聞いてくれ。
「審査は三年ほどかけて行われ、六度目の最終審査では、十人に絞られた。ファイナリストに残るだけでも、すごいことなんだよ」
「なるほど〜」
ニコニコしているアリスは、全く信じていない。せめて、大会名を外国風にしておくべきだったか。
「面白いお話ね。レオンにそんな才能があったなんて知らなかったわ」
完全に、僕の作り話だと思っている。
仕方ない、結論から言おう。
「準優勝は、僕だ」
「え?」
「優勝したのは、ラウル様だよ」
アリスは目を見開いたまま、動かない。
現実に起きたことだと仮定して、もう一度、捉え直そうとしたけれど、情報量が多過ぎて処理能力を超えた、というところか。
彼女の手を握り、じっと見つめる。
「これは、君のお婿さんを選ぶための大会なんだ」
「わ、たし、の?」
証拠もなしに信じろというのは酷な話だが、ここで自覚しておかないと、辛い思いをするのはアリスだ。
現実を受け止めて欲しい。
「……でも、私は借金のカタに、ラウル様と婚約したのでしょう?」
何だ、その設定は。
ギルツ家の巧みな領地運営は有名だ。いろいろ秘密にしたせいか、アリスの解釈が現実と乖離している。
「残念ながら、冗談ではないし、借金とは何の話かな? またおかしな勘違いをしているね。これを見てくれ」
やはり、証拠が必要らしい。
王家の紋章が入った一枚の紙を、テーブルの上に置いた。




