最終話.復活、そして決別
理力の塔に集まった工の神素は一つに融合し、僕は再び『神』としてこの世界に形を成した。
――さて、どうすべきか。
散り散りになった「確定ページ」はすべて回収し、世界のルールは僕の手元に戻った。
だが、神として復活した今、僕の心にあるのは高揚感ではなく、深い自省だった。
僕は、神としては失格だ。
僕は理力の塔を後にした。神としての記憶と力を保持したまま、
かつての始まりの村――今は魔王城と呼ばれている場所へ向かう。
この星を消滅させるのは容易い。神界に戻り、ノートの記述をすべて抹消すれば終わる話だ。
だが、この星にはすでに1000年の歴史があり、懸命に生きる民がいる。
この星の未来は、この世界で最も長く生きているあの男に託すべきだろう。
到着した魔王城には、誰の気配もなかった。
かつての要塞の面影を残す天守閣の頂に、ただ一人、虚空を眺めて佇む男がいるだけだった。
1000年ぶりの再会。魔王ヤスは僕の姿を見て、力なく笑った。
「……お前、復活したのか。ははは、しぶとい野郎だ」
「ヤス、謝りに来たんだ。悪かった」
僕は素直に頭を下げた。「『俺Tueee』なんて考えはもう捨てたよ。
この星の未来は、この星の人間たちで決めてほしい」
ヤスは何も言わず、僕の言葉を待っている。
「僕はこれから神界に帰り、ノートに『一万年が過ぎた』と書き込むつもりだ。
神である僕は、もう二度とこの世界に干渉しない。それを伝えに来たんだ」
永い沈黙の後、ヤスがポツリと漏らした。
「……頼みがある。俺を、ただの人間に戻してくれ。人として、老いて死にたい」
その願いに含まれた切実な孤独を、今の僕は理解できた。
「……分かった」
僕はヤスの『魔王』の称号を剥奪し、彼をただの男へと戻した。
これが、僕が神として行う最後の「書き換え」だ。
僕は振り返ることなく、光の中に消えていった。
自分の過ちを、これ以上この世界に刻まないために。
僕は、神界へと帰っていった。
(完)




