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おまけ 可愛い

 *ライハルトとフィリアナが婚約して学校を卒業した後の話です


「…そろそろ、愛称で呼んで欲しいな…」

 言われたフィリアナは、ちょっと目を逸らして言うライハルトに再び胸を撃ち抜かれて、心の中だけで悶える。今日も可愛い。


「単純に縮めてライ、とか?」

「いや、ライだと嘘つきみたいだし…」

 とよく分からない事をライハルトはブツブツ言いだした。


「ハルトとか、どうかな?」

 しばらく考えてからそう言ったライハルトは、無駄に晴れやかな顔をしているのだが、いいのだろうか。


「弟とかぶってるけどいいの?」

 今気が付いたという顔でショックを受けているライハルトも可愛い。この世の終わりみたいな雰囲気まで漂わせるとか、私を撃ち抜きすぎ。


 ライハルトは致命的なくらいに記憶力は悪いけれど、一度覚えた事は早々忘れない。今この一瞬だけ弟の名前を忘れていただけなんだと思う。


「ルト…? いや、それも被るし。ライしかオリジナルが無い…」

 またまたしばらく悩んだ後、ライと呼んでくれと言われた。


「じゃあライは、私の事を何て呼んでくれるの?」

 今度はそわそわしだした。多分、これが本当の狙いだったっぽい。乗せられますよ、私も愛称で呼ばれたいし。


 私は両親にはフィーと呼ばれているが、同じは嫌だとライハルトに言われた。くっ…独占欲とか愛を感じる。今すぐ小躍りしたい!


「アナ…、いや、穴とか無いわ。フィー、フィリ…。フィリ! でもいい?」

「勿論」

 嬉しそうに笑うライが今日も可愛い。



 *参加していたお茶会から帰ってきたフィリアナの話


 フィリは普段我が儘を言ったりしないが、嫌な事があった時だけは真っ直ぐ俺の所へ来る。

 フィリは俺と一緒にいると癒されると言ってくれる。嬉しくて仕方がない。今日も、予定が無かったのに訪ねて来るとケビンから聞いた。


 今日は確か、お茶会だったはず。城に到着したと聞いて、いつものをやって欲しくて、問題のない資料を手にしてフィリが来るのを待つ。

 コツはソファの片側をちょっと広めに開けておいて、そちら側の腕もゆったり空間を用意しておくこと。準備はばっちり。


 フィリはちょっとイライラした感じでやって来た。挨拶もそこそこにフィリは狙い通り隣に座って腕の下から頭を入れて抱きついて来てくれた。

 ああ、幸せ。頼られて嬉しい。資料なんてもう見てもいないけれど、フィリは資料を読むのを邪魔しないように気を使ってくれている。


 気持ちが落ち着くまで、このままそっとされるのがフィリは大好き。頭を撫でながら、幸せを堪能する。あー俺のフィリが今日も可愛い。

 フィリが落ち着いたら話を聞く。今回は色々と絡まれて嫌な思いをしたらしい。


「最近ライの評判がいいから、絡んでくる人が多くてイライラしちゃった」


「フィリの為にも評判が上がるのは良い事だと思っているけれど、媚びを売る人が多すぎて疲れたの? 貴族ってそういうとこあるし」


「違うわ!」


 フィリが力説するには、今俺は人生初のモテ期を迎えているらしい。ないない。


「フィリ、それは無いよ。婚約者候補にも全く相手にされていなかったのに」


「評判が良くなってから、掌を返して来たのよ! 自分たちに人を見る目がなかったのを棚に上げて、私をひがんでるの!」


 フィリが言うには、私財もたんまり、今や特産品で話題の地方貴族と仲良しで、このままいけば次期王太子な俺は超がつく優良物件らしい。まだ叔父さんが王太子って発表して無いしね。

 だからフィリは、たかが地方貴族が王太子妃になど相応しくないとあの手この手で言われ続けたらしい。俺が婿入りするんだけどね。


 ケビンが言うには賢明な一部の中央貴族は、フィリの家がいつまでも養子を決めない事とか弟が謹慎中だったとかの情報を仕入れて、今は動かない様に釘をさしているらしいが。


「ケビンに言って、お仕置きして貰おうかな…」

 フィリはケビンのお仕置きが凄いことを知っているので、焦って止めてきたが、人の(もうじき)を捕まえてとやかく言うとは何事だ! です。


 控えていた(普通に書類仕事をしてた)ケビンが満面の笑顔で頷いた。この後、フィリを虐めた中央貴族の家には、地方貴族からの品物が一切入って来なくなった。

 流行に敏感な事を自慢する中央貴族には致命的で、俺へのお詫びかと思われる面会依頼が殺到したが、忙しい事を理由にケビンが全て断った。


 実際に忙しいしね。叔父さんは元々外交を担っていたが、次期王太子として今は地方貴族の視察に行っている。元々叔父さんと行っていた場所はいいけれど、俺とケビンで行っていた所には顔つなぎも含めて同行している。

 フィリも王太子妃の噂をそのまま利用して同行していて、叔父さんは結婚前の二人の保護者的な存在のフリをしている。正直叔父さんもケビンも邪魔。


 叔父さん、優しいしいい人だけど、話せば分かるんだけど、生まれた時から王族だからか、王族としてのオーラが凄すぎて、慣れていない地方貴族は皆恐縮しちゃうんだよねー。

 叔父さんも悩んでた。でも、叔父さんが王太子になる発表と同時にする婚約発表が終われば、その問題は解決すると思っている。


 叔父さんの婚約者は、おもてなし上手な外交官の娘さん。西にある国の人だけれど、ダメ男製造機とか言われて、婚約を二度解消、仕事に生きていた人らしい。

 叔父さんにフィリと気が合うと思うから会ってくれと言われて、フィリと一緒に外交について行ったらフィリがお姉様と呼ぶくらい懐いた。


 フィリは兄弟姉妹が羨ましかったらしく、凄く嬉しそうにしていて、そりゃあもう可愛かった。叔父さんも妹が出来たと喜ぶ婚約者を、ゆるゆるの笑顔で見ていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 控えめに言って最高の一言でした。 ありがとうございました!
[良い点] 叔父さん夫婦がいい人そうでよかったね。 さっさと国王に印籠を渡してしまえばいいのに。 [気になる点] 弟夫婦へのお仕置きはまだ温いような? 離婚は絶対に認めませ~ん! [一言] ライハルト…
[一言] ゲームの強制力のせいで無能だとさげすまれていた王子が、本当は記憶力が悪いだけで、ものごとの本質を見極める能力や調整力に優れていて、前世の記憶を利用して、周りの人たちと幸せになるという、話の流…
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