第63話 勇者は不明を抱える
複雑な気持ちを抱いたまま、僕は移動を続ける。
結局、明確な答えは出なかった。
それも当然だろう。
答えを出すに足る根拠を僕は持ち合わせていないのだから。
僕の本質とは、一体何なのか。
何が正しいのか。
そして何が間違っているのか。
二つを判断するにあたって、何を基準にすればいいのか。
疑念は尽きないが、目的をこなさなくてはならない。
死園の発展と継続のため、盗賊団と協力するのだ。
その後、王国に攻め込む。
僕はまだ忘れていない。
きっと大丈夫だ。
もはや自分が何者なのか判然としなかった。
それでも物事は着々と動き続ける。
葛藤と自己嫌悪など関係ない。
いくら悩んだところで、先の行動に変わりはなかった。
曖昧なままでも、やるしかないのだ。
当初は平穏だった道のりは、次第に過酷なものへと変貌していく。
連日の悪天候に加えて、王国軍と遭遇するようになったのだ。
彼らは主要街道で待ち構えていた。
何らかの手段で僕達の接近を察知したのだろう。
或いは死園の活動を警戒して、兵士を常駐させているに違いない。
迂回も可能だが、それだけ時間がかかる。
なるべく早く死園に戻りたいため、僕達は蹴散らすようにして進んだ。
兵士達に罪はない。
ただ命令されただけで、不運の一言に尽きる。
もっとも、僕の敵となって立ちはだかる以上、容赦はできない。
血みどろになりながらも切り裂いて、叩き潰し、踏み砕き、乗り越える。
「死ねェ、勇者!」
一人の兵士が、決死の覚悟を以て斬りかかってくる。
浮かぶ涙は如何なる感情によるものか。
隙だらけなその姿に憐みを覚える。
僕は死体を掴んで引き上げると、盾のように使って斬撃を防いだ。
浴びせられた刃が死体を割り、傷口から血が噴き出す。
僕の身体が傷付くことはなかった。
斬られた死体を兵士に押し付けて、死体ごと蹴りを叩き込む。
「ごあっ!」
吹き飛んだ兵士が地面を転がんだ。
そこに歩み寄りながら死体を拾い、勢いよく叩き付ける。
兵士は地面にめり込んで即死した。
はみ出た腕が痙攣している。
滴る返り血を拭っていると、少し離れたところからマリーが駆けてきた。
彼女は杖を掲げながら僕に報告をする。
「こっちは残らず倒したー!」
「ああ、助かるよ」
僕は笑顔のマリーに応じる。
無邪気な様子だが、頬に付いた血が凄惨な戦いがあったことを想起させる。
マリーの後ろにはエマとネネもいた。
誰も怪我をしていない。
優秀な三人の魔術師が徒党を組んでいるのだ。
数を揃えたところで、一般の兵士では敵わないだろう。




