第46話 勇者は死園の未来を考える
その日の昼前、埋葬が完了した。
僕が殺した盗賊は残らず土に埋められた。
血が滲んで地面が変色しており、僅かに異臭が漂っている。
もっとも、家屋からは離れているため、生活の上では特に困らないだろう。
あまりに酷ければ、消臭効果のある薬草を撒いておけばいい。
薬草は森に群生しているので、それなりの量を簡単に確保できる。
作業を終えた盗賊達は、井戸で水浴びを始めた。
彼らは疲労し、その場に倒れ込む者も少なくなかった。
僕に監視されながらの作業だったので、気疲れしているようだ。
それでも弱音を吐かない辺りは、さすがと言う他ない。
有名な盗賊団の一員として活動しているだけあって、なかなかの胆力を持っているらしい。
その後は休憩を挟んで畑作業を任せた。
それも終わって再び水浴びを済ませたところで夕食にする。
村の中央で大きな鍋を囲み、肉と野菜をひたすら煮込む。
具だくさんのスープは素朴な味わいで美味しくできた。
盗賊と僕達は同じ料理をその場で食べた。
ついでに酒も提供して、遠慮なく彼らに振る舞う。
酔いが回ったのか、盗賊達は大騒ぎしていた。
半ばやけになっていたのかもしれない。
食事について、盗賊達に粗末なものを与えるつもりはなかった。
過酷な環境だからこそ、救いとなる時間を用意しなくてはならない。
優しくすることで反抗心を削いでいくのだ。
隷属魔術があるものの、それだけに依存するのは不安が残る。
盗賊達がこの境遇を受け入れるのが一番だろう。
レナとの再会で学んだことがある。
僕は視野が狭い。
目的に執着するあまり、選択肢が自然と絞られている節があった。
もっと柔軟に考えて、動くべきだと思う。
夜、盗賊達は一つの家屋に収容した。
夜間は結界で封鎖して出られないようにする。
これで僕達が眠る間に何かされるという心配がなくなる。
脱出計画を企んでいるかもしれないが、別に構わない。
本格的に立案しようと来た時点で、隷属魔術が発動するからだ。
発動の予兆を感じられるそうなので、彼らへの警告にもなる。
現状、僕達を裏切る行為はほぼ不可能であった。
(このまま上手くいくといいが……)
深夜の私室で僕は考え込む。
死園の規模は大きくなりつつある。
奴隷のような立ち位置とは言え、新たな住人もやってきた。
今後もさらなる発展を続けていきたい。
しかし、この状況に王国が黙っているはずがない。
いずれ第二第三の刺客を放ってくるはずだ。
それらに対処する必要がある。
僕はまだまだ力不足であった。
この地を永遠のものにするのは、勇者の使命より困難かもしれない。
それでもやらねばならなかった。
明日は盗賊達からこの地を訪れた理由を聞こうと思う。
彼らも精神的に落ち着いた頃だろう。
多少は素直になっていることを願いたい。




