第43話 勇者は闇夜に赤を添える
首を切られた男が倒れる。
噴き上がった血飛沫が頭上から降り注ぎ、外套を濡らしていった。
外套が重たくなり、鼻腔を突くような臭いが立ち込める。
「…………」
僕は赤く染まった鎌を一瞥する。
刃が少し欠けていた。
首を切った際、骨に当たったのだ。
とは言え、武器としてはまだまだ使える。
僕は鎌の血を振り払うと、静かに盗賊達を見回す。
彼らは呆気に取られていた。
仲間の死に思考が追いついていないようだ。
何の行動に移ることなく、ただ口を開けて佇んでいる。
その間に僕は動く。
地面を蹴って突き進み、近くにいた別の盗賊を蹴り飛ばした。
悲鳴を聞きながらさらに走る。
怒声を上げようとした三人目を引き倒すと、その首に鎌を押し付けて切り裂いた。
視界が真っ赤に染まったので、手の甲で拭い取る。
手元では盗賊が目を見開いて死んでいた。
僕の外套を握り締めながら息絶えている。
それを引き剥がした僕は、全身から鮮血を滴らせて立ち上がる。
残る盗賊達が僕を睨んでいた。
そして、一斉に叫びながら突進してくる。
犠牲は出たものの、戦意を喪失するほどではなかったらしい。
(もう少し始末するか)
僕は盗賊の死体から短剣を奪った。
それを使って正面から迫る剣を受け流すと、相手の腹に鎌を突き刺す。
振り上げる動きで腹を引き裂いて、横から飛んできた矢を飛び退いて躱した。
当たったところで死なないが、これも実戦の勘を取り戻すための訓練だ。
多少はまともな立ち回りをするべきだろう。
いつまでも能無しの怪物でいるわけにはいかない。
僕は振りかぶって鎌を投擲する。
高速回転する刃は、弓の射手の額に突き立った。
射手は仰向けに崩れ落ちて動かなくなる。
この段階から、盗賊達は怯み始めていた。
接近する者はいなくなり、互いに顔を見合わせるようになる。
数に任せた攻撃が無意味だと察したのだろう。
自分が犠牲になりたくないので、仲間が動き出すのを待っている。
(悪くない流れだ)
僕は静かに歩き、最適な位置取りを選定した。
盗賊達を牽制しながら動くと、背後に誰もいない状態を保つ。
さらに結界を操作して村へ続く穴を閉じた。
これで不意に侵入されることもない。
「どうした。さっさとかかってこい」
剣を手に挑発するも、反応は返ってこない。
このままでは埒が明かないと悟り、僕は盗賊達に襲いかかった。




