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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第41話 勇者は襲撃を察知する

 夜も更けた頃、僕は村の中を散策していた。

 月明かりの下を無心で歩く。

 そんな折、奇妙な音を耳が捉えた。


 何か硬い物を叩く音だ。

 魔力の反応も感じる。

 少なくとも二十ほどは集まっているようだった。


 何者かが、結界を破壊しようとしている。

 夜間は誰も出入りできない状態に切り替えているので、無理やり突破するつもりなのだろう。


(眠らなくて正解だったな)


 僕は睡眠を取る必要がない。

 こうした異常事態に備えて巡回していたのが功を奏した。

 もっとも、今の時期に襲撃されることはないと考えていた。

 まさか一日目から来るとは予想外である。


(一体、何者なのだろうか)


 レナの裏切りにより、現在の王国軍は混乱している。

 魔術契約書を交わして油断し、僕を止めるどころか事態を悪化させてしまった。

 今後の対応を決めかねている頃だろう。

 新たな戦力を見つけなくてはならない。

 だから、この段階で攻め込むような真似はしないはずだった。


 村の中を移動しながら僕はいくつかの可能性を考える。

 一番妥当と思えるのは、領主の暴走だろうか。

 息子を殺された恨みで私兵や傭兵を使って襲撃してきたのだ。

 可能性としては最もありえると思う。


 それなら正当な怒りであった。

 子を殺されて冷静でいられる方が珍しい。

 僕に復讐したい気持ちも理解できる。

 ただし、大人しく殺されるつもりはなかった。


 異変のある方角へ向かっていると、途中で家屋から出てきたエマと遭遇した。

 彼女は不審げに顔を顰めて、魔力の光で質問してくる。


『どうしたの?』


「誰かが村にやってきたようだ」


 僕が答えると、エマは険しい顔になった。

 光が出るのを警戒したのか、今度は僕の手の甲に指で文字を書く。


『マリーも呼ぶ?』


「いや、心配いらない。僕が片付けてくる」


 相手が誰かは知らないが、結界の破壊に苦労している。

 その点から大した実力でないことが窺える。

 僕だけで対処できるだろう。


 そのままエマの前を通り過ぎようとしたところで、彼女は僕の手を掴んできた。

 少しの躊躇いの後、文字を書いてくる。


『気を付けて』


「ああ」


 頷いた僕は駆け出した。

 途中で納屋に寄ると、そこから草刈り用の鎌を取り出す。

 武器としてはやや心許ないものの、これで十分だ。


 ついでに納屋からくたびれた外套も借りた。

 薄い安物の生地で、埃と砂に塗れた代物である。

 見栄えは悪いがちょうどいい。

 返り血くらいは防いでくれるはずだ。


 外套を纏って鎌を携えた僕は、今度こそ真っ直ぐに向かった。

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