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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第28話 勇者は魔剣を警戒する

 掴みかかろうとする僕に対し、レナが剣を振るう。

 容赦なく首を切り落とす軌道だ。

 僕は身を沈めて躱すも、そこに魔剣の振り下ろしが迫る。


(こちらの動きを読んでいるな)


 悪態を吐く暇もなく、僕は石畳を叩いて横に転がった。

 直後、空を切った魔剣が石畳を粉砕する。

 その下の地面まで大きく抉れているようだった。

 今の一撃をまともに受けていれば、頭部を失っていたところである。

 僕は転がりながら立ち上がると、レナに注目する。


 彼女は軽々と魔剣を持ち上げて肩に担いだ。

 もう一方の手では剣を弄んでいる。

 余裕の表情は見せかけではない。

 まだ本気を出していないのだろう。


(隙の少ない二刀流だ)


 前に会った時は片手剣と盾を愛用していた。

 本当に変幻自在らしい。

 決まった型を嫌う性質が表れている。


(僕も武器を用意すればよかったか……)


 両手を緩く開いて構えつつ、少し後悔する。

 このままだと間合いで大きく不利だった。

 負傷を覚悟で突進して一撃で殺す手もあるが、気軽には使えない。


 常人が相手ならそれで十分であるものの、レナは現役の英雄だ。

 下手な戦い方は通用しない。

 何より彼女の手には魔剣があった。


 あの魔剣の能力は単純だ。

 使い手の魔力を喰らい、それを増幅した上で破壊力に変換する。

 ありふれた能力には違いないが、あれの恐ろしい点は破壊力の変換率に尽きる。


 ほんの少しの魔力を注ぐだけで数倍の威力に跳ね上がるのだ。

 潤沢な魔力を持つ者が扱えば、斬れないものはない。

 事実上、どのような防御も打ち破れるとされる。

 だからあの時、アイリは巨人を一撃で仕留められたのだった。


 僕の再生能力なら魔剣で斬られても死なない。

 しかし、あの破壊力で行動不能に陥る恐れがあった。

 再生速度を超える勢いで攻撃され続ければ動けなくなる。

 そうなると敗北が決定してしまう。


 致命傷を受けるのは構わない。

 だけど、動きを阻害されるような傷は駄目だ。

 絶対に避けなくてはならない。


 こういう時に武器破壊ができれば楽だが、魔剣は非常に頑丈であった。

 歴代の使い手の魔力を吸って成長しており、使い込むほどに強靭になる。

 今の状態だと、僕の怪力でも破壊できるか怪しい。

 賭けに挑むべきではないだろう。


 僕が考察する一方で、レナは楽しげに笑う。


「まるで獣のような戦い方だね。私の知る勇者はもっと――」


 彼女が喋る途中、僕は割れた石畳の破片を蹴り飛ばした。

 素早く察知したレナは身を翻して避ける。

 僕はそこに突進していった。


(搦め手では敵わない。力押しで圧倒するのが手っ取り早い)


 横薙ぎの魔剣を跳んでやり過ごして、拳を振りかぶる。

 レナはもう一方の剣を動かすと、僕の脚を切断しようとした。

 的確な判断だが、ほんの僅かに遅い。


 僕はそれを蹴って弾き、その動きの延長で拳を振るう。

 叩き込んだ一撃は防がれず、無防備なレナを殴り飛ばした。

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