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元勇者の墓守は理想の死園を築き上げる  作者: 結城 からく


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第23話 勇者は提案される

 しばらく進んで街が近付いてくると、遥か前方で妙なことが起き始めた。

 街の門が開いて、そこから数十人の兵士が出てくる。

 正規の鎧を身に着ける者が半分くらいで、他の者達の装備は不揃いだ。

 おそらくは傭兵だろう。


 臨時で掻き集めたのか、彼らの動きに統率がない。

 ただし訓練といった雰囲気ではなく、意識はまだ距離のある僕達に向けられていた。

 全体的に剣呑な空気であった。


(仕掛けてくるつもりか?)


 まだ矢の届く間合いではないが、風の魔術を使えば別だ。

 魔術の投射も種類によっては命中させられる。


 僕は馬車を曳く足を止めると、後ろの二人に指示をする。


「防御魔術の準備をしてくれ。いつ攻撃が飛んでくるか分からない」


「うん、分かった!」


「……」


 エマとマリーはさっそく魔術を行使した。

 彼女達は馬車全体を守るように障壁を展開する。

 それなりの強度なので、矢の雨くらいなら防げるはずだ。

 何度も受ければ怪しいものの、時間稼ぎとしては十分だろう。

 その間に僕が接近し、相手の陣形を崩すことができる。


(どう動いてくる?)


 僕は気を引き締める。

 門から現れた集団はその場に展開した。

 いつでも攻撃を始められるような位置取りを行っている。

 そのまま仕掛けてきそうなものだが、不自然なほどに静まり返っていた。

 ひりつくような緊張感がこちらまで漂ってくる。


 僕はその場で門前の彼らを眺める。

 なぜか静寂が続いていた。

 魔術を維持するマリーも不思議そうに呟く。


「攻撃してこないね」


「油断すべきではないけど、何かおかしいな」


 僕は慎重に馬車を曳き始める。

 やはり攻撃は飛んでこない。

 向こうはこちらを警戒するばかりであった。


(指揮官が留めているのか)


 あの人数だろうと、僕なら容易に屠れる。

 気狂い勇者の脅威を理解している人間もあの中に入るはずだ。

 それなら即座に攻撃してこないのも頷ける。


 あのように堂々と現れたということは、何らかの策を有しているのだろう。

 肝心の策については心当たりがない。

 ただし、どのような作戦だろうと打ち破れる自信があった。


 お互いの表情が見える距離まで迫ったところで、向こうの集団から鋭い声が飛んできた。


「墓守よ! そこで止まれ!」


 発言者は鎧を着た男だった。

 集団の最前列におり、どうやら責任者にあたる人間らしい。

 兜で顔は隠されているが、佇まいからそれなりの手練れであるのが分かった。


 僕は命令通りに停止すると、少し声を張って応じる。


「買い物をしに来ただけだ。通してくれないかな」


「まずはこちらの話を聞け! 大罪人の貴様に良い話がある」


 鎧の男が有無を言わせない口調で叫ぶ。

 続けて彼は予想外の言葉を発した。

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