表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予言者のジレンマ  作者: オレオレ!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

第5話

「ねえ、おじさん。……3万円だけでいいの。

残りは全部いらないから」


私は縋るように言った。

だが、老人は困ったように眉を下げ、首を横に振る。


「そういうわけにはいかないよ。

あの番号は、君に言われなきゃ買わなかったんだから」


「じゃあ、3万円だけ今ちょうだい!

残りはお母さんに預けるってことでいいから……っ!」


「それも、お母さんに渡す時に相談しなさい」


――大人。


正しくて、誠実で、そして今の私にとっては絶望的に“話が通じない”存在。


何度シミュレーションしても、彼は必ず私の家に向かおうとする。

このままでは、41万円の札束も、

私の自由も、すべて母さんの“管理”という名の金庫に閉じ込められてしまう。


「……なら、おじさんに教えなきゃよかった……! うわぁぁん!」


私はその場に座り込み、泣き出した。

半分は演技で、半分は本物の悔し涙だった。


老人は慌てふためき、最終的に折れるように5万円を私の手に握らせた。


「……わかった。泣かないでくれ。5万円は君にあげる。

でも、残りはちゃんとご両親に渡すからな」


結局、私は老人と共に自宅へ戻り、

母さんに「36万円(本当は41万円)」という名の爆弾を届けた。

その夜、当然のように母さんの雷が落ちた。


「知らないおじさんに話しかけるなんて、何を考えてるの!

運良く当たったから良かったけど、もし外れて逆恨みされたらどうするのよ!」


「ごめんなさい……」


頭を下げながら、私は確信していた。


今のままでは、私は永遠に“子供”という檻から出られない。

母さんが私を愛してくれているのはわかる。

でも、その愛情が、私の予言する“最善の未来”を壊していく。


手元に残ったのは、老人からせしめた5万円。

これが、私の“再誕”のための軍資金だ。



数日後の深夜。

家族が寝静まったのを見計らい、私はリュック一つで家を抜け出した。


向かったのは、自宅から数キロ離れた高速道路のサービスエリア。

暗闇に紛れ、大型トラックの列を一つずつ“観測”していく。


運転手の未来を覗き込む。

このおじさんの行き先は……東京。よし、当たり。


私はトイレに向かう運転手の隙をつき、薄暗い荷台の隅に滑り込んだ。


しばらくして、重いエンジン音が鳴り響き、トラックが動き出す。

振動。排気ガスの匂い。

夜を切り裂いて進む孤独な感覚。


サービスエリアに止まるたび、見つからないよう息を潜め、荷台を乗り継ぐ。

ひやひやする綱渡りの果て、朝焼けが差し込む頃、

トラックは東京の街角にあるコンビニに停車した。


ドアが開く音と同時に、私は影のように荷台から飛び出し、雑踏へと紛れた。


(ついた……東京)


そびえ立つビル群。

冷たく流れる人の波。

けれど、ここに来たからといって何かが変わるわけじゃない。


私はまだ、ただの無力な子供だ。


これからどうすればいいのか。

どうやって、この街に“私の楔”を打ち込むのか。


悩んでいた私の目に、駅前の古びた宝くじ売り場が映った。


私はそこに並ぶ人々の背中を、一人ずつ見つめ始めた。

過去と未来――その両方を、片っ端からスキャンしていく。


私が求めているのは、ただの“いい人”じゃない。


私の才能を理解し、私を利用し、そして私に利用されてくれる――

この孤独なサバイバルのための、“最初のパートナー”。


そして、私は見つけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ