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最終話

事件から数日。

私は母さんと――そして新しいお父さんと一緒に暮らし始めた。


ハジメがあの日、公共の電波で放った「宣戦布告」の影響は凄まじかった。

マスコミは血眼になって“予言の少女”を特定しようとしたけれど、

新しいお父さんの毅然とした対応と、私の“筋金入りの引きこもり適性”が勝った。


家から一歩も出なければ、誰にも会わない。

数ヶ月もすれば、人々の興味はハジメが次々と塗り替えていく“新しい世界のニュース”へと移り、

家の前のマスコミも、潮が引くようにいなくなった。


かつて私が死に物狂いで守ろうとした「1999年の記録ログ」は、

今やハジメの手によってズタズタに書き換えられている。


けれど――

そんなデタラメな世界が、今の私にはとても心地よかった。



ある日。

リビングで寛ぐ母さんのウィンドウを何気なく覗いた私は、息を呑んだ。


数日後の未来。

そこには、大津波のニュース映像が流れていた。


「……お母さん」


私は母さんに相談した。

この津波を予言すれば、また世界が騒ぎ出す。

せっかく手に入れた平穏が壊れ、家族に迷惑をかけてしまう。


迷う私に、母さんは優しく、けれど力強く言った。


「そんなの、迷惑なんて思わないわよ。

……絢、その力は何のためにあるのかって、ずっと悩んできたんでしょ?

なら、もう答えは出てるはずじゃない」


その言葉が、ストンと胸に落ちた。


そうだ。

ハジメが“占いを外すため”に世界をかき混ぜてくれたように――

私は“誰かを救うため”に、あえて外れる予言を叫べばいい。


私は、懐かしい番号をダイヤルした。


「……もしもし、ハジメ? 久しぶり。……うん、元気。

……あのさ、また仕事、増やしていいかな」


受話器の向こうで、ハジメが楽しそうに笑う気配がした。


私の瞳に映るウィンドウは、今日も無機質な数字を刻んでいる。

けれど、その先に続くのはもう“真っ黒な空白”じゃない。


私たちが、これから自由に描き変えていく――

真っ白なキャンバスだ。

(完)

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