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詰んだ俺を拾ったのは、美人喫茶店主でした~隙だらけのポンコツ姉さん育成計画~  作者: よるひ


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第20話 水族館デート

 8月のうだるような暑さの中、俺と澪さんはレンタカーを借りて茨城の水族館にやってきた。

 夏休み中とあって、平日でもかなりの大混みだ。


「湊くん……もう、だめ……」


「澪さん頑張るっす。あと少しで鮫見られますよ鮫!」


 鮫なんて絶対見たいじゃないか。男のロマンだろ。


「ほんっと、どうでもいい……」


 トイレ脇のシートに座り込み、動くことを拒絶する陰キャ喪女。

 ――いや、それはさすがに失礼か。


 もう一歩も動きたくないって顔をする澪さん。これからどうやって彼女を楽しませよう……。


 親友である美冬のおすすめだった水族館は、どうやら適正の有無があったようだ。

 魚を見て魚を食べて夜はベッドで魚になる。妙にそのフレーズが頭に残ってしまったので水族館を選んだわけだが、澪さんが喜んでくれなけりゃ全く意味がない。

 いかにこれから澪さんを夜の魚にするか……じゃなくて、告白できるムードを作るか。


 計画はこうだった。午前中に水族館にきて、昼は海鮮市場で磯焼きを楽しみつつ、海を眺めながら告白をする。

 なんて考えていたが、すでに渋滞に巻き込まれて昼過ぎの到着となってしまった。計画の甘さ、杜撰さが露呈してしまった。


「じゃあイルカショー見ましょう。そこなら動かなくても良いし、澪さんにぴったりっす」


 何か言いたげにじっと俺を睨む澪さん。


「んー。じゃあ行く……」


 よかった。もう帰るとか言い出したら告白どころじゃなくなってしまう。険悪な雰囲気で帰りも渋滞とかだったら目も当てられない……。


 イルカショーは開演まで1時間ほどある。じっと並ぶのはそこまで苦にはならないようなので一安心だ。


「澪さん小さい子って苦手だったりします?」


「ん~、赤ちゃんは可愛いなって思うよ。でも、キーって声上げる子は苦手かな」


「それは同意っすね。水族館ってもっとアダルトなイメージだったけど、時期が悪かったっすね。……夏休みだもの、子連れ多くて当たり前だったな」


「ううん、せっかくお店の盆休みだからね。私は家でまったりでも良かったけど、湊くんが誘ってくれたんだもん。いっぱい楽しまないとね!」


 ちょっと座って元気が出たのか、前向きな言葉が出てきた澪さんにほっとした。


 入場可となり、なるべく後ろの席に座る。最前列はイルカの洗礼を浴びることになるのは周知の事実だ。

 今日の澪さんはノースリーブの紺色のワンピース。体のラインも分かりやすいので、濡れてしまうと大変なことになる。


「なんかさ、始まる前までは面倒くさいなって思うけど、だんだんテンション上がってくるね!」


「そう言ってくれて嬉しいっす。お、司会のお姉さんが来ましたよ!」


「みなさーん! こんにちはー! イルカショー開演です! 本日の主役のキャベツくん! 好きなことは綺麗な女性をびしょ濡れにすることです! さあ今日はどの美女がびじょびじょになるのかなっ!」


「……。」


 突っ込みどころが多すぎて、言葉を失ってしまった。


 キャベツくんは尾鰭を器用に操り水しぶきを上げている。

 というより、水を投げているようだった。


 次々に被害者が悲鳴をあげている。まさか最後方にまで水しぶきが来るなんて、普通思わないよな。


 大丈夫。隣にいるのは陰キャ喪女だ。……美人だけど。


「ぎゃああああ!」


 ……案の定イルカの美人レーダーにひっかかってしまった。

 ずぶ濡れになった澪さんに、用意してあったスポーツタオルを手渡す。


「ありがとう……準備良いね。もしかして、こうなるの知ってた?」


 ジトッとした目で見つめられてしまった。


「そんなわけないっすよ……でも、水も滴るいい女っす」


「……そっすか」


 ああ、ぶすっとしちゃった。

 澪さんは今日のデートのためにオシャレを準備してたのを知っている。メイクもいつも以上にばっちりにしていた。

 今日の澪さんはとても綺麗だった。でも、びしょ濡れに……。


 人を小馬鹿にしたような鳴き声を出しているキャベツ。こら、反省しろ。


 その後は汚名返上と言わんばかりの見事な芸を見せたキャベツくん。その勇姿に澪さんの機嫌もようやく直ってきた。


 ギャグ仕立てのアシカショーにお腹を抱えて笑ったり、彼女の表情の豊かさに思わず見惚れてしまう。

 やっぱり澪さんは素敵だな――。


 ショーが終わり会場を後にする。


「澪さん、これ着ておいてください。そのままだと風邪ひくし、見た目がやばいっす」


 ぴたっと張り付いたワンピースはセクシーすぎたので、着ていたYシャツを澪さんに渡した。俺が着るとかなりのロング丈だけど、澪さんが着るとギリギリお尻が隠れる程度だ。ぐぬぬ。


「ありがとう湊くん。――このシャツいい匂いがするね」


 そう言ってくんくんする澪さんは相変わらずだなと思う。


 俺のシャツを羽織ったまま売店に行ってTシャツとハーフパンツを購入。トイレで着替えを済ませた澪さんは、妙にご機嫌だった。


「このシャツ可愛い! キャベツって書いてあるのにイルカなんだよ! うけるー」


 見事に水族館の術中にはまっているようだ。

 本人が喜んでるなら良いんだろう。


 でも、その格好の澪さんに海を見ながら告白するのか……笑っちゃったら台無しだな……。


 難易度が更に増してしまったようだった。

 告白するかどうするか、悩ましいなあ……。








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