第18話 恋人とは
「みーなーとくーん!」
ビールが4本目に突入すると、大体何かしらのクセが出てくるのがいつもの澪さんだ。
今日は何上戸なんだろうか。
「はいはい、澪さん。つまみまだ食べるなら何か作りますよ。ご注文あります?」
「んふ、呼んだだけー! 呼べる人がいる幸せを満喫!」
「そっすか。澪さんが楽しそうだと俺も嬉しいっす」
今日はかまってちゃんな酔い方か。可愛らしい澪さんが堪能できそうだと思える程度に、俺は彼女との晩酌を楽しめるようになってきた。
「湊くんは優しいよねー。今日の天ぷらホント美味しかったし、和も洋もいけるんだね。中華はできるの?」
「中華もいけるけど火力があればさらに良いっすね。まあどれも広く浅くっすよ。やっぱ職人として何年もその道で頑張ってる人には到底勝てないすよ」
「私のツマミ程度なら何でもぱぱって作れちゃうもんね! それでいて可愛いし。――ねえ、また抱っこしながら飲んでも良い?」
「えー……いやっす。この前もそう言いながら授●手●きとかってマニアックなことしようとしたじゃないすか……」
ぶーっとした表情になる澪さん。実際この人、好き放題やらせると歯止めが効かなくて困る。
「湊くんは嫌なの? もー素直じゃないんだから。男の人だって乳首でいけるんだよ?」
「いけないっす! なんすかその誤情報! そのF●NZAから得た知識はさっさと捨ててください! 」
「やってみないとわからないじゃないー! じゃあさ、前●腺マッサージで即●キとかどうかな。レッツタイムアタック!」
「だから澪さんは知識が歪みすぎで拗らせすぎだって言うんすよ!」
「もー湊くんは我儘だなあ。じゃあどうするのが良いの?」
完全に澪さんのペースだ。まあ毎度のことなんだけど……。
「普通に、その、キスしたりとか、触れ合ったりとか……。そんなんで良いじゃないすか!」
俺の照れ混じりの言葉に澪さんが満面の笑みを浮かべる。出会った頃は大人しめなポンコツさんだったけど、最近の澪さんは妖艶な雰囲気を纏った魅力の塊のような女性に成長したようだった。
俺から恥じらう言葉を引き出すように仕向けたり、しどろもどろするところをニヤニヤして眺めたり、とにかく彼女にペースを握られっぱなしな気がする。
抗いたいけど経験不足はどうにもならない。
今もすでに澪さんに脱がされているし……。
今夜も澪さんに溺れていく……。
――朝が来た。
窓から差し込む光が部屋を明るく照らす。時刻は8時か……ちょっと寝すぎたようだ。
澪さんは隣ですうすう寝ている。ホントこの人は自由だなあ。
昨晩も何度も愛し合った。なんか、触れ合うたびにどんどんお互いにハマってきてる気がする。
別に悪くはない。むしろ人に言ったら羨まれる事なのかもしれない。
綺麗なお姉さんと一緒に働いて、頻繁にイチャイチャできる。誰だって夢に見るようなシチュエーションじゃないかな。
ただ、二人の関係は一体なんなんだろう。お互い恋人だよって言ったことがないんだよなあ。
お互いの気持は好き同士で間違いないと思うんだけど、恋人同士って思って良いのかな……。
世のカップルたちはどうしてるんだろうか。
役場に“恋人宣言”を提出するなんて決まりはないだろうし、すべては口約束なのは分かっているけども、やっぱり宣言したほうが良いのかなあ。
どうもタイミングを逃した感があるんだよな。先に愛し合ってしまったから余計だ。
変に恋人になりましょうと言って「今まではなんだったの?遊び?」とか言われてもなあ。いや、言わないか。言わないだけで心で傷ついても可哀想だ。
そもそも澪さんが全くそのつもりがないってパターンもあるかもしれない。そうなったら完全な俺の独りよがりだ。
悲しすぎるだろうそれは……。
デート。そうだ、デートはどうだろうか。
一応今は俺もお金をいくらか持っている。
奢られるだけのデートじゃさすがに甲斐性無しも良いところだからな。
たっぷり遊んだ後に夕暮れの砂浜を二人で歩く。沈む夕日をいつまでも眺める。
月が澪さんを照らす頃に「澪さん、月がとっても綺麗っす」と愛をささやく。これでもう二人は恋人確定だ。完璧じゃね?
丁度そんな事を考えていたら澪さんが起き出した。寝ぼけながらあくびをしつつ俺に微笑む。
「おはよう湊くん。昨日は惜しかったね。もう少しで乳首でいけそうだったのに」
「……そっすね」
だあああ! もう! このポンコツ姉さんは!
デートのプランはもう少し慎重に練るとするか……。




