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言われるまま知世は紙面下部に目を移す。そこには、代表的な作品の写真がいくつか横一列に掲載されている。目を閉じたまま上向く女性のオブジェ。紺色の樹脂で型取られた裸婦の像。幾何学的な形のガラスを組み合わせた立体作品。
芸術に対して造詣が深くない知世は、頭にただ「現代アート」という一語だけを浮かべた。そうした中、最も端に位置する写真を目にしたとき、ようやく脳内で理解という名の火花が小さく弾けた。
五百円玉を模した奇妙な物体。裏には溶け出したかのように、つらら状の突起物がいくつも形成している。具体的な大きさは写真だけでは判別できない。
「五百円、硬貨」知世は思わずそうつぶやいた。横で成沢が落ち着いた声で訊いた。
「どう思う。木崎巡査はこれを見て」
思うことは多くあった。今朝から受け取った限られた情報。そして、一課総出で追っている犯罪組織。
「窃盗団と純金色のコインには関連がある」知世が言うと、成沢が「そうかもしれんし、そうでないかもしれん」とたしなめるように言った。




