表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天国へ贈るコイン  作者: 西松清一郎
22/38

3-2

「彼女の本格的な作品制作に関わったことは、本当に一度もないのです。つまり、美術館に展示されるような作品ですな。そういった物の制作依頼を受けたことは一切ないのです。ただ、一年ほど前でしょうか。鎧塚氏から一件、奇妙な仕事を受注しまして」

「ほお」成沢が一言相づちを打つ。


「私は本業の傍ら、クラウドソーシングで個人的に鋳物作成の仕事を募っております。と言っても、せいぜい小遣い稼ぎのようなものです。ちょっとした置き物などの制作依頼をネット上で受けて、空いた時間にこそこそと取りかかるわけです」

「ご自宅にそういった設備を持ってらっしゃる」成沢が尋ねる。

「そうです、普段は工場勤めですがね。手に収まる程度の金属製品であれば、自宅で二三日の間に作ることが出来ます」


「それで、その奇妙な仕事というのは」成沢が言うのを、知世は口を閉じて聞いている。

「はい。『黄金色の五百円硬貨』を作ってほしい、とのことでした」


 知世はここで呼吸を切った。それから音もなく息をしなおすと、横目で成沢の仕草を盗み見た。警部は例のごとく、それまでの居住まいを崩さずにいる。しかし、知世が感じたのと同じ類の緊張が警部の体にも走ったのは、間違いないように思えた。山喜は、急に起きた二人の神経の硬直に気付かず、続けて言葉を吐き出す。


「当然、私は戸惑いました。すぐには取りかからず、いくつかの質問をクラウドサイトを通じて投げました。彼女は純金の色をした五百円玉そっくりの物を作ってほしい、と言うのです。それも大量に」


「一枚や二枚ではなかったのですか」成沢が訊く。

「はい。結果的に申しますと、何回かに渡り、計数千枚の依頼が来ました。もちろん全て鎧塚氏による依頼です。一枚あたり百円で作ってほしい、とのことでした。私は『それは模造貨幣に当たる可能性がある』と指摘し、何度かの交渉の末、表に『見本』の文字、そして裏に赤い翼のマークをプリントする、ということで話をつけました」


「木崎巡査」成沢が木崎の方へ手を差し出した。「例の鑑識からの報告書を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ