里へ
「そう理解していただければ幸いです」
いつも通りシェリスが部屋の隅のテーブルでカップに茶を注ぎ、トレイを持ってきた。茶の入ったカップを客人、次いでスイの前に静かに差し出し、ポットだけが残ったトレイを二人の間に置いて一礼して部屋を出る。
スイは茶を勧めた。
「いただきます」
客が茶を口にするのを待ってスイも一口飲んだ。里からの使者はカップを置いて話を始めた。
「スイ殿からのご提案、長老会で検討させていただきました。検討の結果」
使者は真っ直ぐスイの黒い瞳を見た。
「承認されました」
「良かった」
スイはほっとした表情になった。使者もスイの顔を見て少しだけ口元を緩める。
「それからスイ殿にぜひ一緒に行っていただきたい場所がございまして」
「行って、欲しい場所?」
そのとき、急に目の前がぐらついた。
スイは意識を失って倒れた。
目を開けると、よく知っている顔が飛び込んできた。
「おはよう、スイ」
にっこりと微笑むのは紛れもなくメノウだった。
自宅の玄関横の応接室で忍びの者と話をしていた。その途中で急に意識がなくなった。
「ここは?」
身体をゆっくり起こしながら辺りを見回した。身体が少し硬くなっているような感じはしたが、特に異状はないようだった。
「眠っていただけだから大丈夫だと思うよ」
メノウがスイの行動を観察しながら言った。
見たことのない造りの部屋だ。寝ていたのは、ベッドでなく、床の上らしい。床も何か藁を編んだようなものだ。美しく草のようないい匂いがほのかにする。天井や柱は木製のようだった。
メノウはスイが一通り部屋を確認し終えるのを待って、保留にしていた問いに答えた。
「ここはね、あまり詳しくは言えないんだけど、長老が用意した家なんだ」
「長老?」
「そう」
メノウが笑った。
「里へようこそ、スイ」




