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魔珠  作者: 千月志保
第8章 魔結晶
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技術の代償

「お邪魔したわね。今日はそれを伝えたかっただけ」

「俺はもう出かけるけど、せっかくだから、お茶でもして帰れよ。母さん喜ぶし」

「そうね。そうするわ。お母様!」

 アリサはドレスの長いスカートを指でつまんで階段を駆け上がっていった。

「いや、お見苦しいところを」

 姉の家での苦笑しながら、シェリスに詫びる。シェリスはにこにこ笑っている。

「それでは、私も失礼いたします」

 シェリスが去って行くと、キリトはバッグを取りに部屋に戻った。

 スイは一週間ほど研究所にいる。静かに一週間待つのか。手紙の文面通り実験に立ち会っているのかもしれないが、そうとは限らない。より危険な状況に陥っている可能性もある。少し不安だ。探りを入れた方が良いだろうか。いや、ここは外務室の管轄外で手を出せる領域ではない。だが、一週間待っても戻ってこない場合は。

 外務室に向かう道で考える。取り越し苦労かもしれないが、思考を他の方向に持って行けない。

 心配ばかりかけさせやがって。


 苦しい。息ができない。意識を失って感覚を閉ざすことさえできない。ただひたすら続く激痛に悶える。

 不意に激痛が強く光る呪術の痕にだけ集中する。

 そうか。

 スイはベッドの脇に置いてあった小瓶に手を伸ばす。目がかすんで手が震えていてなかなか思うようにつかめない。手が届いて瓶に触れたところを狙ってぐいっと握り締め、引き寄せる。栓を抜いて一口無理やり飲み込む。すうっと胸の苦痛が和らぐ。

 よく分からないが、二、三時間で寝たり起きたりを繰り返し、回数的に考えると、丸一日ほど経っただろうか。昨日の〈器〉になったときの苦痛がリアルに再現される夢と、マーラルで呪術を施されたときの夢を交互に見て、苦しくなってすぐ起きる。全く疲れが取れているような気がしない。むしろどんどん体力と精神を削られているような気がする。

〈器〉になった魔術師たちも何度もそのときの苦痛を夢の中で味わったのだろう。スイのように他に記憶に深く刻み込まれた苦痛のある人は、その夢を見ることもあるのだろう。

 レヴィリンの話だとこれが一週間続く。本当に魔術師たちを狂気に陥れるのは、〈器〉になったときよりもこの一週間、そしておそらくは急にこのような夢を見なくなるわけではないはずなので、その後なのだろう。そして、また〈器〉にされ、同じ苦痛に耐えなければならないかもしれないという恐怖。

 スイはマーラルの夢を見たときはもちろん、〈器〉になったときも呪術が魔力に反応してしまったため、〈器〉になったときの夢を見たときにも、呪術の痕が激痛に襲われる。呪術は薬で和らげることができるので、レヴィリンが調合して置いてくれた。

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