夕食会へ
「そうか。港か門まで送ろうか」
「ううん。いいよ」
断られそうな気はしていたが、メノウの表情に気づかない振りをしていつもどおり穏やかな笑顔で訊いた。それがかえってつらかったのか、メノウは申し訳なさそうに言った。
「さっきは尾行の邪魔しちゃってごめん」
スイは静かに首を横に振った。
「気をつけて」
戸口でメノウを送ると、スイはすぐに家の中に入ってシェリスに伝えた。
「キリトの家に戻る。夕食に誘われているんだ」
メノウと話していた部屋に戻って軽く片づけを済ませ、スイはクラウス邸に向かった。
クラウス邸の前に来たときには、午後四時半頃になっていた。
やはり先ほどの魔術師が戻ってきてクラウス邸を見張っている。
スイは扉の前に着くと、チャイムを鳴らした。
「待っていたよ、スイ。もうアリサたちも来ているんだ。入って」
「セシルとマノンに会うのは随分久しぶりだな。元気にしていたかな」
キリトが出迎えた。スイが話している途中で扉が閉まった。スイは大きくため息をついて笑う。
「何の小芝居だよ」
「門から少し距離があるからあんまり聞こえないとは思うけど、念のためな」
先ほどスイが来たときには見張りはいなかったから、アリサと同じようにあたかも以前から夕食会に招待していたかのように振る舞ってみた。
「つき合わされる身にもなってみろ」
「お前はそういうの得意だろ」
そんなやりとりをしていると、横からマノンが飛びかかってきた。スイは余裕のある動きで抱き留める。
「スイさん!」
「久しぶりだな、マノン」
「スイさん、剣のお稽古しよう」
「こら、マノン」
アリサがセシルと姿を見せる。
「いろいろありがとう、スイ」
「こちらこそありがとうございます」
リスクを冒してまで情報を伝えてくれた。アリサ夫婦には感謝してもしたりない。
「こんにちは、スイさん」




