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魔珠  作者: 千月志保
第6章 疑惑
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マーラルの辿る道(2)

「覚えているか。以前マーラル王が政治犯などを魔術の実験に使っているという報告があっただろう」

 あった。外務室の諜報担当者が拾ってきた情報だ。

「城と魔術研究所を結ぶ地下通路があって、その中央部付近に囚人を監禁しておく牢獄があるんだ」

「メノウはそこに捕まっていたのか」

 台を拭いていた手を止めてスイの方を見ると、スイは険しい目でうなずいた。

「メノウを独房から出すことはできたのだが、運悪くマーラル王に出くわして」

「マーラル王に?」

 驚いた表情でキリトに訊かれて、スイは先を急いだ。

「それで」

 そう言いかけたときだった。スイがうめき声を上げ、右胸を押さえて倒れ込んできた。キリトはふきんを放り出して慌ててスイの体を支えた。素速く左手で瓶を取ると、先ほど閉めたばかりの蓋を開けてスイの口に押し当てた。半ば無理やり飲み込んだのを確認し、瓶を唇から離す。激痛はなくなったようだったが、呼吸がひどく乱れていた。

「少し、落ち着いてから話した方がいいんじゃないか」

 だが、スイは遮るように続けた。薬が効いている今のうちに。

「マーラル王に、呪いを……一度、刻まれた呪いは……」

「そうか」

 キリトは苦しそうな表情でスイの話を聞いた。

「いいように、もてあそばれて、激痛で、意識が、なくなって」

 またスイが胸を押さえてうめいた。薬のおかげか先ほどよりは軽そうだった。時間も一瞬で、すぐに直前の呼吸の乱れた状態に戻った。

「すまない。帰りの船で寝たときにも、うなされて……」

 キリトはスイの目をまっすぐ見てうなずいた。

 呪術が発動して激痛に襲われる夢を見ているときは、現実でも呪術が発動している。キリトは寮で同室だったとき、何度も夜中、スイのうめき声で目を覚ましたことがある。胸をはだけて確認すると、青く光る線がくっきりと現れている。帰りの船で疲れて仮眠を取ったときにもあのときのようになっていたに違いない。

「ちょっと待っていてくれ」

 言うと、さっと片づけの続きを済ませ、キリトはスイの前に戻ってかがみ込んだ。見上げるようにしてスイの顔をのぞき込むと、呼吸が少し落ち着いてきていた。

「客室に行かないか? 少し横になった方がいい。あまり眠れていないだろう?」

 客室は客が泊まるために用意されている部屋なので、ベッドがある。薬ができたので、安心して眠ってもらってもいいし、続きを話してもらってもいい。

「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ」

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